不動産取得税は、土地や建物を購入・贈与によって取得した場合に、新しい所有者に課せられる税金です。
相続で不動産を取得した場合などを除いて、有償・無償の別を問わず、登記の有無にかかわらず課税されます。
税金には、経費計上できるものとできないものがあり、例えば所得税や住民税は経費になりません。
不動産取得税に関しては、経費計上自体は可能ですが、どのような仕訳を切るのか・勘定科目は何にするのかについて、実際に処理をしたことがない人は戸惑ってしまうかもしれません。
この記事では、不動産取得税を処理する際の仕訳や勘定科目について解説します。
経費計上する時期についても注意点がありますので、そちらもあわせてご確認ください。
不動産取得税が発生した際の仕訳・勘定科目について
事業に必要な土地・建物の購入によって、不動産取得税が発生した場合、経費に計上するため仕訳を切らなければなりません。
以下に、仕訳を切る際の勘定科目や注意点について解説します。
勘定科目は「租税公課」が妥当
不動産取得税を支払った場合、使用する勘定科目は「租税公課」が妥当です。
租税公課は、損益計算書における費用科目に該当し、国税・地方税等の税金である「租税」と、国・地方公共団体に対する公的な課金「公課」が合わさった名称となっています。
租税公課の科目を使って不動産取得税を処理する場合、以下のような仕訳になるでしょう。
≫ 例:新店舗を建設するための土地を取得したため、課税された不動産取得税360,000円を現金で支払った。
【租税公課 \360,000 / 現金 \360,000 】
不動産取得税は、自分で金額を計算する必要がある税金ではありません。
多くの場合、不動産を取得してから半年~1年半ほどの期間が経過した後、都道府県から納税通知書が届きます。
納税通知書に記載されている納期限までに、所定の方法で納税する形になります。
具体的な納付方法に関しては、都道府県それぞれで異なるため、選んだ納付方法によっては仕訳が変わってきます。
例えば、先の例でクレジットカードを使って納付した場合は、
【租税公課 \360,000 / 未払金 \360,000 】
という形で仕訳を切ります。
その後、クレジットカード会社からの請求額が無事口座から引き落とされた場合は、
【未払金 \360,000 / 普通預金 360,000 】
このように処理を行います。
土地や家屋の取得価格には含めない
不動産を取得した場合、土地・家屋本体の金額以外にも、諸々の経費(付随費用)が発生します。
具体的には、以下のようなものがあげられます。
- 仲介手数料
- 固定資産税清算金
- 立退料
- 地方公共団体への寄附
- 地鎮祭などの儀式にかかる費用 など
しかし、不動産取得税に関しては、取得時の付随費用に含める必要はありません。
よって、発生した段階で、一括して経費計上を行います。
不動産取得税は、土地・家屋の価格次第で変動するため、高額の場合は相応の取得税が発生することになります。
ただでさえ高額の買い物となる不動産の購入時に、高い税金も支払わなくて済むと考えれば、購入者にとっては有利なルールと言えるかもしれません。
消費税の課税対象ではない
不動産を購入した場合、消費税がかかる場合とかからない場合があります。
一例として、不動産会社などの事業者からマンション・一戸建て・土地などを購入した場合は、事業者が対価を得て行う資産の譲渡に該当するため、消費税が発生します。
逆に、事業者ではない個人からマンション・一戸建て・土地などを購入した場合は、消費税は発生しません。
そして、不動産取得税は、いずれの取引が行われた場合でも不課税となります。
理由は、多くの人がご承知の通り不動産取得税自体が「税金」であり、モノ・サービスの対価としての支払いではないからです。
会計ソフト上で税区分を入力しなければならない場合は、不動産取得税に関しては「対象外」とすればOKです。
不動産取得税の経費計上について
仕訳について理解したところで、続いては不動産取得税の経費計上について、タイミングや計上方法などをご紹介します。
事業として不動産取引に携わっているのかどうかによって、若干計上方法が変わってくる場合がありますが、その他の業種の事業者については、計上方法はそれほど難しいものではありません。
経費算入時期は「納税通知書」が届いた時点
不動産取得税は、固定資産税・自動車税と同様に、納税額を課税庁が計算して課税するものです。
ただし、納期が分割して定められている税金については、各納期の税額について、
- それぞれの納期の開始日の属する年分
- 実際に納付した日の属する年分
の必要経費とすることもできます。
不動産取得税の場合、原則として分割での納税は認められていないため、経費計上時期は、基本的に「納税通知書」が届いた時点となります。
ただし、納税事務所に記載されている税事務所に問い合わせを行い、一括で支払えない事情が認められた場合は、分納がOKになる場合があります。
概算で見積もって経費計上するのはアリ?
もし、不動産取得税の金額があらかじめ概算できていた場合、納税通知書が届いていなかったとしても、先に経費計上するのは問題ないのでしょうか。
結論から言うと、原則としてはNGという判断になります。
これを債務確定基準と呼び、不動産取得税の場合は、都道府県知事から納税通知書の交付があって初めて納付すべき税額が確定する形になるため、損金算入時期も納税通知書の交付があった日の属する事業年度となります。
そのため、不動産取得税の経費計上を行うタイミングとしては、
- 納税通知書が届いた時点
- 実際に税金を納付した時点
で必要経費に算入できます。
仮に、昨年の10月に不動産を取得後、賃貸が11月からスタートし、そのまま本年を迎えてしまったとします。
この時点で不動産取得税の納税通知書が届いていない場合は、まだ具体的な金額が通知されていない上に、納税も済んでいないため、概算額の見積もりができたとしても経費計上はできません。
不動産販売業者は売上原価として計上することも可
納税通知書が届かない限り、不動産取得税は経費計上できないのは、例えば不動産販売業者でも同様なのでしょうか。
実は、販売業者のケースでは必ずしもそうとは言い切れません。
なぜなら、不動産販売業者は、保有するためではなく販売するために土地を取得しているため、不動産取得税は実務上「売上原価」に近いものとなっているからです。
例えば、分譲用として造成した土地8区画のうち、4区画がまだ販売できずに在庫として残っているとします。
すると、それらの土地は棚卸資産となりますから、土地の分譲原価として見積計上が認められることになります。
よって、不動産販売業者が土地等の在庫を抱えている場合は、売上原価として不動産取得税の見積計上は可能と判断できます。
ただ、見積計上だけが絶対のルールというわけではなく、算入するかどうかはあくまでも法人の任意です。
おわりに
不動産取得税は、基本的に納税通知書が届いてからの支払いとなり、経費計上も納税通知書が届いてから行う形が原則です。
しかし、不動産販売業者の場合は売上原価として見積計上できるなど、例外もあります。
仕訳に関しても、どのような支払方法で取得税を支払ったかによって、勘定科目が変わってきます。
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