はじめに

取引先へのお礼や従業員への表彰、キャンペーンの景品など、ビジネスで商品券を利用する場面は多くあります。
しかし経理処理では、商品券の「使い方」や「目的」によって勘定科目が異なるため、誤った処理をすると税務上のトラブルになることもあります。

この記事では、商品券の購入から配布、受け取りまでの流れを整理しながら、目的別の正しい勘定科目と仕訳方法 をわかりやすく解説します。

商品券の基本的な考え方

商品券は「現金同等物」に近い性質を持ちますが、法律上は現金ではなく「有価証券」に分類されます。
そのため、購入した時点ではまだ費用にはならず、資産(仮払金など)として一時的に処理するのが原則です。

費用として処理できるのは、商品券を実際に使用・贈与した時点です。

目的別にみる勘定科目と処理方法

① 取引先や顧客への贈答・お歳暮・お中元の場合

取引先に対して商品券を贈る場合は、交際費として処理します。
取引関係の維持や感謝を示す目的であり、贈答品と同じ扱いになります。

勘定科目:交際費

法人の場合:1人あたり5,000円以下の飲食費は損金算入が認められますが、商品券は「飲食費」ではなく「贈答品扱い」になります。
個人事業主の場合:必要経費として処理可能(事業関連が明確であることが前提)

仕訳例:商品券を取引先に贈呈した(1万円分)

借方 交際費 10,000円  
貸方 現金 10,000円

② 社員への賞与・慰労・表彰・誕生日プレゼントなどの場合

従業員に商品券を支給した場合は、給与扱いとなります。
現金と同様の価値があるため、課税対象(源泉徴収が必要)です。

勘定科目:給与手当

支給時には、所得税の源泉徴収と社会保険料の計算に含める必要があります。

仕訳例:従業員へ商品券5,000円分を支給した

借方 給与手当 5,000円  
貸方 現金 5,000円

※経理処理だけでなく、給与明細にも反映させることが大切です。

③ 社員旅行や社内イベントでの景品・ビンゴ大会など

従業員全体を対象としたイベントや懇親会での商品券は、福利厚生の一環として扱うことができます。

勘定科目:福利厚生費

ただし、支給対象が全社員でなく一部の特定者に偏る場合は給与扱いになるため注意が必要です。

仕訳例:社員旅行でビンゴ景品として商品券10,000円を配布

借方 福利厚生費 10,000円  
貸方 現金 10,000円

④ アンケート謝礼・モニター謝礼・キャンペーン景品など

顧客やモニターへの謝礼として商品券を渡す場合は、販売促進費として処理します。

勘定科目:販売促進費・広告宣伝費

これは、売上向上・顧客獲得を目的とするため、交際費ではなく広告宣伝費の扱いになります。

仕訳例:キャンペーン当選者へ商品券3,000円分を送付

借方 広告宣伝費 3,000円  
貸方 現金 3,000円

⑤ 商品券を購入したとき

商品券を購入した時点では、まだ「使っていない」ため経費にはなりません。
一時的に「仮払金」「貯蔵品」などの資産科目で処理します。

勘定科目:仮払金 または 貯蔵品

仕訳例:商品券を1万円分購入(今後使用予定)

借方 仮払金 10,000円  
貸方 現金 10,000円

その後、実際に使用・贈与した時点で上記のように「交際費」「福利厚生費」「広告宣伝費」などへ振り替えます。

消費税の取り扱い

商品券自体は「物品」ではなく「支払手段」にあたるため、購入時も贈呈時も消費税は非課税です。

ただし、商品券を使って物やサービスを購入した際には、その購入時点で課税取引 となります。

つまり、商品券そのものには消費税がかからず、使ったときに課税されるのがポイントです。

税務上の注意点

1. 従業員への支給は原則「給与」

「イベントの景品だから福利厚生費で処理したい」というケースも多いですが、支給対象が限定的だと給与とみなされる可能性があります。
→ 社員全員が公平に参加できるイベントかどうかを基準に判断しましょう。

2. 取引先への贈答は金額と頻度に注意

高額な商品券を頻繁に贈ると、税務署から「交際費の過大支出」として指摘される場合があります。
領収書・送付記録・贈答リストを保存しておくことが重要です。

3. 使用目的が不明確な商品券は「貯蔵品」で処理

誰にどのタイミングで渡すか決まっていない商品券は、経費ではなく一時的な資産として計上しましょう。

勘定科目のまとめ

目的勘定科目税務上の扱い
取引先への贈答交際費損金算入可(限度あり)
従業員への支給給与手当源泉徴収・課税対象
社内イベント景品福利厚生費対象者が全員なら非課税
顧客キャンペーン景品広告宣伝費・販売促進費損金算入可
購入時(未使用)仮払金・貯蔵品資産として一時処理
贈答として受領雑収入益金算入

まとめ:商品券の勘定科目は「目的」で決まる!

・商品券は現金ではなく、有価証券(現金同等物)として扱う
・経費にできるのは「使用・贈呈した時点」
・目的によって「交際費」「給与手当」「広告宣伝費」「福利厚生費」など勘定科目が変わる
・従業員への支給は給与課税、消費税は非課税

商品券は小さな金額でも税務署が注目しやすい項目のひとつです。
「目的・対象・金額」を明確にして、領収書や台帳を残すことが正しい経理処理のポイントです。

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