はじめに

年始の商売繁盛祈願や地鎮祭、安全祈願祭など、事業を行う中で神社や寺院に「初穂料(はつほりょう)」を納める機会は少なくありません。

しかし経理の観点では、「宗教的行為」なのに経費になるの? と迷う方も多いのではないでしょうか。

実は、初穂料のような支出は目的や支払先との関係によって経費になる場合とならない場合があるのです。

この記事では、初穂料の意味から勘定科目の選び方、仕訳例、税務上の注意点までをわかりやすく解説します。

初穂料とは?

「初穂料」とは、本来は神社などにお供えする金銭や品物(初穂=その年初めて収穫した稲穂)を指します。
現在では、神職によるお祓いや祈祷を依頼した際の「謝礼」として支払う金銭を指すことが一般的です。

よくある初穂料の支出例
・商売繁盛・交通安全などの祈祷料
・地鎮祭・上棟式の神事費用
・神棚・お守りの購入代
・年始の神社参拝時のご祈祷費

初穂料の会計処理に迷う理由

初穂料は「事業の安全や繁栄を祈る」という精神的・宗教的な要素が強いため、
税務上は「業務に直接関係する支出かどうか」 が問われます。

純粋に宗教目的 → 経費不可(個人的支出)
事業運営や安全祈願が目的 → 経費として認められる可能性あり

つまり、目的と支払先との関係を明確にしておくことが、正しい会計処理のポイントになります。

初穂料の勘定科目の基本

初穂料は一般的に「寄付金」や「交際費」「福利厚生費」「雑費」などで処理されますが、
どの科目を使うかは支出の目的で判断します。

以下に代表的なケースを整理しました。

支出の目的勘定科目経費計上の可否
商売繁盛祈願・社運隆盛祈願交際費/雑費経費計上可(事業関連が明確な場合)
地鎮祭・上棟式など工事安全祈願地鎮祭費用(または建設仮勘定)経費計上可・資産取得時は取得原価に含める
従業員の安全祈願・社内神棚設置福利厚生費経費計上可
完全に個人としての祈祷・初詣家事関連費経費不可
顧客・取引先との同行参拝交際費経費計上可(事業関連性がある場合)

ケース別の仕訳例

① 商売繁盛祈願で神社に1万円の初穂料を納めた

事業の発展を願う目的であれば、交際費または雑費として経費計上可能です。

借方 交際費 10,000円  
貸方 現金 10,000円

または

借方 雑費 10,000円  
貸方 現金 10,000円

② 従業員の交通安全祈願を行い、初穂料を支払った

従業員の福利目的であれば、福利厚生費として処理します。

借方 福利厚生費 15,000円  
貸方 現金 15,000円

③ 建設予定地の地鎮祭で神主に初穂料を支払った

地鎮祭や上棟式など、建築に直接関係する場合は、資産取得のための付随費用として建設仮勘定建物に含めます。

借方 建設仮勘定 30,000円  
貸方 現金 30,000円

(建設完了後に建物に振り替えます)

④ 個人的な初詣・厄除けの祈祷を行った

個人的な祈願や家庭の安全祈願など、事業と関係がない支出は経費になりません

この場合は「事業主貸」として処理します。

借方 事業主貸 10,000円  
貸方 現金 10,000円

消費税の取り扱い

初穂料は宗教法人に支払う性質上、消費税の課税対象外です。
そのため、仕入税額控除も適用できません。

請求書や領収書にも「消費税区分なし」または「非課税」と記載されている場合が多く、仕訳上も消費税を計上する必要はありません。

税務上の注意点

① 事業関連性の明確化

税務署が最も重視するのは「事業との関連性」です。
以下のような場合は経費として認められる可能性が高くなります。

商売繁盛・社運隆盛など、事業に直接関連する目的で支払った
社員全体の安全祈願や福利厚生目的で行った
建設現場など、業務遂行上必要な神事で支払った

一方、個人の信仰心に基づく支出は「私的費用」として経費になりません。

② 領収書・祈祷申込書を保存する

初穂料は神社で「領収書」をもらえない場合もありますが、税務上は支出を証明する書類が必要です。

領収書が出ない場合は、

神社名・支払日・金額・目的をメモした「支払記録」
祈祷申込書や参拝写真など、支出事実を示す資料を保管しておくと安心です。

③ 顧客同行の参拝は交際費扱い

取引先や顧客と一緒に初詣や祈祷を行う場合、その支出は「交際費」に該当します。
ただし、高額で頻繁な支出は過大とみなされる可能性があるため注意が必要です。

初穂料と寄付金の違い

初穂料は「祈祷などのサービスに対する謝礼」として支払うものですが、寄付金は「見返りを求めずに支払う金銭」です。
このため、目的に応じて次のように区別します。

支出内容勘定科目備考
祈祷料・安全祈願・商売繁盛祈願交際費・雑費などサービス対価の要素あり
神社・寺院への寄付・奉納寄付金損金算入限度あり

初穂料の経費計上が認められやすい例

・事務所や店舗に神棚を設置する際のお祓い
・会社や従業員の交通安全祈願
・建設現場・工事現場の地鎮祭費用
・年始の商売繁盛祈願(事業用名義の祈祷)

いずれも事業目的が明確で、社会通念上も妥当な支出であることがポイントです。

まとめ:初穂料の勘定科目は「目的と関連性」で決まる

目的勘定科目経費可否
商売繁盛・安全祈願交際費/雑費経費可
地鎮祭・上棟式建設仮勘定/建物経費可(資産計上)
社員安全祈願福利厚生費経費可
個人祈願・厄除け事業主貸経費不可
顧客同行参拝交際費経費可

初穂料は「宗教的行為だからNG」ではなく、事業目的が明確であれば経費として認められることも多いのです。
支出の理由を明確にし、証憑を残すことが正しい処理への第一歩です。

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