雑費はいくらまで計上できるか→上限はない
日本の税制では「いくらまでなら雑費にしてよい」といったルールはありません。雑費に限らず経費の勘定科目には上限は存在しないのです。
よって、法律上は雑費がどれだけ増えてもかまわないという結論になります。
ただし、運用上では雑費が増えるのは注意が必要です。
なぜなら、雑費が増えると税務署に目を付けられたり、経営ができにくくなるからです。
雑費には上限は無いですが、多くても経費全体の10%程度までに抑えておいたほうが安全です。
そもそも雑費とは何でしょうか?どの経費が雑費で計上できるのでしょうか?
そもそも雑費とは?
雑費とは事業に必要な経費のうち、以下の17項目のどれにも含まれない費用を言います。
給与賃金・外注工賃・減価償却費・貸倒金・地代家賃・利子割引料・租税公課・荷造運賃・水道光熱費・旅費交通費・通信費・広告宣伝費・接待交際費・損害保険料・修繕費・消耗品費・福利厚生費。
つまり、雑費とは上記のような常に経営に必要な経費とは異なる、臨時的で少額な経費という意味になるでしょう。
雑費の例
例えば雑費の例として以下のような費用が考えられます。
- 法人用クレジットカードの年会費
- 銀行の振込手数料
- インターネットの解約金・違約金
- サービスのキャンセル料
- 臨時清掃の費用
- 引っ越し費用
これらは日常に支払うような出費ではないため、雑費になります。
なんでも雑費で計上したらどうなる?
自分で記帳している個人事業主の中には「雑費なのだからさまざまな経費を入れて良いだろう」と考え、あらゆる経費を雑費で申請してしまう人がいます。
しかし、これはさまざまな面で問題があります。
一つずつみていきましょう。
税務署から目をつけられる恐れ
雑費に上限はありませんが、あまりにも多くなりすぎると税務署はいい顔をしません。
ひょっとすると怪しんで税務調査を入れてくる可能性もあります。
雑費が増えると怪しまれる理由は「どんぶり勘定」だとみなされるからです。
ちゃんと毎日記帳していたとしても「売上の申告漏れが存在するのでは?」と疑われます。
また、すべて雑費で処理すると損益計算書に記載される経費の勘定科目が雑費しかなくなってしまい、何にどれぐらいの経費がかかったか税務署がチェックできません。
税務署はどの勘定科目にだいたいどれぐらいの経費がかかるのか経験的に知っていて、その基準からの乖離によって怪しいかどうかを判断しています。
もし全て雑費で計上してしまったら「各勘定科目の割合を知られたくないから雑費で計上したのではないか?」と良からぬ疑いをかけられて税務調査に入られる可能性があります。
本来経費にならないような費用を計上していなければ問題ありませんが、それでも税務調査に入られると対応に手間がかかります。
できるだけ疑わしい行動は避けたほうがよいでしょう。
経営が可視化されにくい
損益計算書を作る目的は確定申告の他にも「経営の可視化」という側面があります。
勘定科目を正確に仕訳すると何にどれぐらいの経費がかかっているかが可視化されます。
もし経営に危うい兆候が出てきたときに全て雑費で計上されていたら、どの経費が経営を圧迫しているのかわかりませんね。
一方、きちっと勘定科目を仕訳していると、どの経費が肥大化しているのかがわかります。よって、経費削減がしやすくなるのです。
いざ経営が傾いてから分析しようとしても遅いので、普段からしっかりと仕訳を行って分析をしておきましょう。
雑費と消耗品費、雑損失との違いは?
消耗品費とは?
雑費とよく似た勘定科目に「消耗品費」があります。
消耗品費は物品や備品などのうち以下の条件のどちらかを満たす物を言います。
- 価格が10万円未満である
- 使用期間が1年未満
消耗品費を事務用品の費用だと考えている人がときどき居ますが、事務用品でなくても上記の条件を満たす物品であれば消耗品費になります。
例えば以下のような物品です。
- 清掃用品
- トイレットペーパー
- 電球
- トイレの手洗い場の石鹸
- ゴミ袋
また、一般的に消耗品のイメージがないパソコンやスマートフォンも購入価格が10万円未満であれば消耗品費として計上します。
雑費と消耗品費の違い
雑費と消耗品費の違いははっきりとした定義はありません。
しかし、運用上は以下の要素で区別します。
- その経費の使用頻度(ときどきしか使わない物は雑費)
- 金額(少額であれば雑費)
- 物かサービスか(形のないサービスは雑費)
これらを総合的に考慮して判断します。
しかし、先述した経営の可視化の観点から考えると、できるだけ消耗品費で計上して、どうしても消耗品とは言えない場合のみ雑費で計上しましょう。
例えば銀行の振込手数料などは何かが消耗したり消費したりしているわけではないため「消耗品費」とは言えませんよね。そのような場合のみ雑費で計上しましょう。
雑費と雑損失との違い
雑費とよく似た勘定科目に「雑損失」があります。雑損失は「営業外の損失で、少額であり、かつ重要でないもの」を指します。
雑費と雑損失の違いは本業に関係あるかどうかです。
どちらも少額で重要ではない経費という意味では共通していますが、雑費は本業に関係ある経費、雑損失は本業に関係ない経費を指します。
雑損失の例には以下のようなものがあります。
- 違約金
- 行政罰の罰金や過料
- スピード違反の反則金
- 損害賠償金
また、個人事業主には雑損失という勘定科目はありません。個人事業主の場合、本業に関係のない経費は「事業主貸」で計上しましょう。
雑費の金額が多すぎる場合の対処法
経費における雑費の割合が10%を超えている場合は、どうすればよいのでしょうか?
対策としては2つ考えられます。
① 既存の勘定科目に当てはめ直す
雑費の各項目を見直し、他の勘定科目に当てはめましょう。
勘定科目は17種類あり、経営に必要な経費はだいたい揃うようになっています。雑費として計上している項目でも他の勘定科目に当てはめられるケースが多いです。
例えば以下のような当てはめ方が考えられます。
印紙税、自動車税など | 租税公課 |
Wi-Fi料金 | 通信費 |
賃貸オフィスの火災保険料 | 損害保険料 |
従業員の健康診断費用 | 福利厚生費 |
ホームページ制作会社への発注 | 外注工賃 |
借入金の利息 | 利子割引料 |
② 新しい勘定科目を作って当てはめる
勘定科目は新しく作ることもできます。
どうしても分類できない経費があるならば、それに合う勘定科目を作ってしまいましょう。
例えば、以下のような例が考えられます。
資料代、電子書籍の代金 | 新聞図書費 |
税理士に払う報酬 | 支払報酬 |
サブスク、クラウドサービス等の利用料金 | 支払手数料 |
講座や研修などの費用 | 研修採用費 |
業界団体の会費 | 諸会費 |
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あらゆる経費を雑費で計上したくなってしまうのは日々の記帳作業がめんどうだからですね。
確かに記帳や仕訳で売上が上がるわけでもないため、この作業が嫌いな個人事業主も多いでしょう。
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