法人や個人事業主ならば車を経費として落とせると聞いた経験がないでしょうか?
実際そのとおりで、普通の一般車でも高級車でも経費には計上できます。ただ、車を経費で落とすにはいくつか条件があります。
その条件を知っているか知らないかで節税の効果が変わってきますので、ぜひ覚えておきましょう。
本記事では車を経費で落とす条件について解説します。
車の購入費や維持費を経費で落とす条件
車の維持費や購入費は経費で落とせます。
ただし、経費で落とすには以下の3つの条件があります。
- 仕事でしか使用しない車は全額経費で落とせる
- 仕事とプライベートで利用する車は一部を経費で落とせる
- 完全にプライベート用の車は経費で落とせない
端的に言えば、仕事で利用した分だけは経費で落とせます。私的な利用は経費では落とせません。
もし車の私的な利用の費用を経費として計上すると、税務署から指摘を受ける場合があります。
車の名義が法人の場合は全額経費でよい?
車の名義が法人の場合でも上記の条件は同じです。法人の車を私的に利用したらその利用分は経費計上できません。
社長がオーナーを兼任している同族会社の場合、仕事とプライベートの境界があいまいになり、法人名義の車をプライベートで利用したりする場合もあるかもしれません。
当然ながらこのような場合は税務署から指摘が入る可能性が高いです。
実際に裁決事例も出ており、平成24年11月1日に国税不服審判所にて、ある会社経営者の車の使用法に関する裁決が行われました。
この経営者は自社名義の車を持っていましたが、それを日常的に妻に利用させていたのです。
この妻は社員でも役員でもないため、車は完全に妻のプライベートで利用されていたことになります。
国税当局はこの車は会社の資産ではなく経費としては認められないと指摘しました。
しかし、審判所は国税の指摘を覆し「車は会社の資産であり、経費計上できないのは妻の利用分のみである」と認めました。
理由としては以下の通りです。
- 会社が車の注文をして代金も会社が払っていること
- 車検証の使用者が会社になっていること
- 車の私的利用での経済的利益は一部に留まること
この理由により、審判所は妻が利用した分の経済的利益を算定し、その部分だけに追徴課税をしました。
この裁決からわかるのは、法人名義の車であれば法人の資産になるが、私的に利用した部分については経費計上できないということです。
このような場合は社用車を私的に利用した人から使用料を支払ってもらい、それを収入として計上することになります。
個人事業主(フリーランス)の場合の車の経費計上
個人事業主の場合も同じです。
個人事業主の車を仕事とプライベート両方で使っている場合も仕事に利用した分だけを経費に計上できます。
個人事業主の場合は家事按分という仕組みがあるので、法人の場合よりもかんたんです。ただし、家事按分の割合には合理的理由が必要になります。
最もかんたんな計算方法は走行距離で区切る方法です。
≫例えば一週間の業務での走行距離が450kmとしてプライベートでの走行距離が50kmとすると、
450km / 500km = 0.9
となり、車の費用の90%が経費として計上できます。
また、車をずっと利用するような業態ならば単純に7日間のうちの5日間働いているので、「5 ÷ 7 = 71%」を計上できます。
いずれにしても割合に合理的な説明がつけば大丈夫です。
高級車でも経費計上できるのか?
高級車でも経費として計上できます。
ただし、高級車は大衆車よりも嗜好品としての意味合いが強いですから、本当に業務上必要なのかを厳しくチェックされます。
とはいえ、高級車が経費として認められた判例も存在しています。
平成7年10月12日の国税不服審判所の非公開裁決です。
この事例では消費者金融の経営者がフェラーリを会社の資産として計上し減価償却費を経費として計上していました。
国税当局はこれを認めませんでしたが、経営者が審判所に訴え、裁決によって経費計上が認められました。
認められた理由はいくつかあり、以下の点が有効に働いたのではないかと言われています。
- フェラーリを出張などに使う際に会社から交通費が支給されていなかった点
- 運転記録をしっかりと作成していた点
- プライベート用の高級車3台を個人名義で別途所有していた点
- このフェラーリは業務でしか使用していなかった点
つまり、嗜好性の高い高級車であっても、現に社用車である事実が明らかな場合は経費として認められると考えて良さそうです。
ただ、大衆車の場合とは異なり、一部でもプライベートで利用していたら認められなかった可能性はあるかもしれません。
経費に計上できる車の費用と勘定科目
車の費用と一口に言っても車にはさまざまな費用がかかりますね。
どの費用が経費に計上できるのかを以下にまとめます。
購入費
車の購入費は経費に計上できます。勘定科目は「車両運搬費」です。
ただし、単一の年度で全額を計上はできません。車は償却資産となりますので、減価償却が必要です。
しかし、車の購入時にかかった保険料、租税公課、手数料、預託金は全額を一度に計上できます。
ローンの利息
車をローンで買った場合、利息は経費として計上できます。勘定科目は「支払利息」です。
ただし、利息しか経費には計上できません。
元本の返済分は経費ではなく「借入金」か「未払金」の減少として計上します。
税金
車に係る税金も経費として計上できます。
具体的には自動車税、軽自動車税、環境性能割、自動車重量税です。勘定科目は「租税公課」です。ただし、交通違反の反則金は経費としては計上できません。
保険料
自動車保険や自賠責保険の保険料も経費として計上できます。勘定科目は「損害保険料」です。
これらは1年単位で計上します。数年分をまとめて払った場合でも1年分ずつ計上しなければいけません。
ランニングコスト
日々のガソリン代や駐車場代、車検代、高速料金などのランニングコストも経費として計上できます。
ただし、勘定科目は費用ごとに異なります。
一例として、以下のようになります。
ガソリン代 | 「旅費交通費」 |
月極駐車場代 | 「地代家賃」 |
出先でのコインパーキング | 「旅費交通費」 |
車検代については複数の費用を合わせたものなので、さらに費用ごとに細分化して計上しなければなりません。
例えば、以下のようになります。
自動車重量税と印紙代 | 「租税公課」 |
自賠責保険料 | 「損害保険料」 |
出車検の基本料や整備費用 | 「車両費」 |
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ここまでの解説で、車の費用が経費計上できることがおわかりいただけたと思います。
しかし、同時に社用とプライベートの線引きや費用ごとの勘定科目の仕訳などが複雑で難しそうだとも思ったでしょう。
車を経費計上して節税したいならまず記帳をしっかりやるべきです。節税が上手くいくかは計上する項目と勘定科目の仕訳が非常に大事だからです。
記帳代行お助けマンでは元経理担当や税理士事務所の元スタッフなど、簿記資格保有者が数多く在籍しております。
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