「自営業になったら生活費をほとんど経費で落として無料にするぞ!」
脱サラ開業を決意しているサラリーマンの方で、このように思っている方はいませんか?ひょっとしたら、開業したあとにすごくがっかりするかもしれません。
実はサラリーマンが考える「経費」と自営業者が考える「経費」は全く異なるのです。これをしっかり理解していないと資金計画が狂いかねません。
本記事では「経費」の超基本をかんたんに解説します。
「自営業の経費=無料になる」ではない
サラリーマンの経費は無料になる
サラリーマンの考える経費とは、接待などで利用した飲食店の領収書を経理部門に提出すると、会社がお金を払ってくれる仕組みですね。
他に、仕事で購入した物品や出張費なども経費に入るでしょう。
しかし、これらが無料で使えるのは、あくまでも「会社が代わりに負担している」からにすぎません。
会社が負担してくれるのは、仕事のために必要な費用だからです。
自営業の経費は無料にならない
上記のように、サラリーマンの経費は会社が負担してくれるので無料です。しかし、自営業の経費は自腹で払わなければなりません。
なぜなら自営業には負担してくれる会社がないからです。
つまり、自営業は【自分=会社】なのです。
したがって、仕事で使う物品や出張費、交通費、取引先との接待費など、全ての経費を自分が支払わなければなりません。
自営業が経費で落としても通常通り財布からお金が出ていくという意味です。ここがサラリーマンの経費との最大の違いです。
会社から見た経費は自営業と同じ
では会社から見た経費はどうでしょう?
会社の経費も基本的には自営業と同じ仕組みです。自社の事業で使ったお金はすべて自社が払います。誰かが補填してくれることはありません。
「自社の事業で使ったお金」というのがポイントです。
「自社の事業で使ったお金」とは自社の社員が仕事で使う物品や出張費、交通費、取引先との接待費などですね。
つまり、社員がこれらの領収書を経理部門に持っていくとお金をくれるのは、会社が払うべき経費を社員が立て替えているだけだからです。
これが自営業や会社の経費と、サラリーマンの経費の違いです。
経費と税金の関係
ここまでの解説で「サラリーマン以外の経費は無料にはならない」とわかっていただけたと思います。
ではなぜ自営業者は必死に領収書を集めて経費の計上をするのでしょうか?
答えは「経費を多く計上すると税金が安くなるから」です。
サラリーマンの場合、給料から源泉徴収されるのであまり税金について意識しないかもしれません。しかし、実は経費は税金と密接な関係があります。
税金の計算方法とは?
昨今は副業などが流行っていますが、わかりやすくするためにサラリーマンは会社の給料のみの収入、自営業は事業のみの収入と仮定して解説します。
この場合、サラリーマンの場合は以下の方法で所得税が計算されます。
サラリーマンの所得税の計算方法 |
・給与収入 – 所得控除 = 課税所得 ・課税所得 × 税率 – 税額控除 = 所得税 |
自営業の所得税の計算方法 |
・売上 – 経費 − 所得控除 = 課税所得 ・課税所得 × 税率 – 税額控除 = 所得税 |
どちらも課税所得に税率をかけて計算するのは変わりません。しかし、課税所得の計算の仕方が違います。
サラリーマンの場合は給与収入から所得控除を引いて課税所得を計算しますが、自営業の場合は所得控除の他に経費も控除します。
所得税は課税所得に税率をかけて計算しますから、経費が控除されたぶん所得税が少なくなるわけです。
このような計算方法になっている理由は、所得税とは所得にかかるものだからです。
所得とはいわば手元に残った利益です。自営業者は売上が全て手元にのこるわけではないので、いくら手元に利益が残ったのか、収入から経費を控除して計算するルールになっています。
「じゃあ自営業になるとやっぱりサラリーマンよりお得なんだ!」と思われるかもしれませんが、そうとは限らないかもしれません。
なぜなら、サラリーマンにも自営業者における経費と同じような意味の控除があるからです。
次のセクションで説明します。
サラリーマンのための救済措置=給与所得控除
自営業が経費の計上で節税できるのに、サラリーマンはできないと上で解説しました。
しかし、サラリーマンでも仕事のために本を買って勉強したり、通勤のためのスーツを買ったりしますよね。
それらが経費に計上できないのは不公平だと問題視され、給与収入には無条件で給与所得控除という所得控除が認められています。
給与所得控除の控除額は以下の通りです。
年収額 | 給与所得控除 |
---|---|
162.5万円まで | 55万円 |
162.5万1円〜180万円 | 年収×40%-10万円 |
180万1円〜360万円 | 年収×30%+8万円 |
360万1円〜660万円 | 年収×20%+44万円 |
660万1円〜850万円 | 年収×10%+110万円 |
850万1円以上 | 195万円 |
例えば年収が300万円のサラリーマンは98万円が無条件に控除されます。
つまり年収300万円のサラリーマンは実質的に年収202万円相当の税金しか払わなくてよいのです。
これは確定申告などしなくても自動的に源泉徴収の金額に反映されています。つまりサラリーマンが払う税金は最初から経費が計上された状態なのです。
この給与所得控除ですが、自営業の経費で同じだけの節税効果を生むのはかなり大変だと言われています。
なぜなら経費を使えばお金が減りますが、給与所得控除はお金を使わなくても無条件に控除されるからです。
自営業者の経営の状態にもよりますが、トータルではサラリーマンのほうが節税しやすいと言われています。
経費についてありがちなその他の勘違い2点
1. 自営業者は何でも経費にできる?
自営業者が経費にできるのは仕事に関する支出のみです。全く仕事に関係のないプライベートな支出は経費に計上できません。
ただし、在宅ワークをしていたり、店舗と住居が同じ建物だったりする場合は、住宅費や光熱費の一部を計上できます。
その際にも、計上する比率に合理的な根拠がなければなりません。
例えば、仕事部屋の面積が全体の面積の30%なので、家賃の3割を経費として計上するなどです。
もし、経費にしてはいけない出費を経費として計上してしまうと、税務署から追徴課税を課されるかもしれません。
2. 経費が増えれば増えるほど得をする?
「わざと経費を増やして赤字にすれば税金を納めなくてよいので得をするのでは?」と考える方がいます。
確かに経費を増やすと納める税金が減るのでそのようなメリットはあります。
しかしこれは諸刃の剣でデメリットもあるのです。
なぜなら、利益が少なくなったり赤字になったりすると社会的信用が失われるからです。今はよくても、いざというときに金融機関がお金を貸してくれなくなります。
これは事業性のある借り入れだけではなく、プライベートな借り入れでも同じです。
なぜならば金融機関が審査で考慮する「年収」は自営業者の場合「課税所得」を意味するからです。つまり、事業が赤字ならば年収0円の扱いになり、非常に不利な扱いを受けることになります。
自営業で節税したいなら記帳代行お助けマンまで
開業したての場合、節税の仕方がぜんぜんわからずにサラリーマンよりも税金が高くなってしまう可能性があります。
節税の第一歩は記帳から始まります。
どの出費が経費になって、どれを経費にしてはいけないのか。簿記の知識があってこそしっかりと節税できるのです。
記帳代行お助けマンは元経理担当や税理士事務所の元スタッフなど、簿記資格保有者が数多く在籍しております。
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