新しい商品のお披露目会や季節行事に向けたコスプレなど、衣装を自前で用意しなければならないケースで問題になってくるのが、衣装・装飾品代の会計処理です。

イベントは頻繁に行われるものではないため、どの勘定科目を使って処理すればよいのか分からず混乱してしまう経理担当者は少なくないでしょう。

撮影・仕事等で必要な衣装や装飾品を処理する方法は、個人事業主か法人か、仕事にとって必要なものであることを証明できるかなど、個々のケースにより変わってきます。

この記事では、そんな衣装代の勘定科目や仕訳について解説します。

撮影・仕事で必要な、衣装・装飾品に関する費用の勘定科目とは

撮影や仕事の現場で、衣装・装飾品が必要になった場合、その費用はどのように処理するのが適当なのでしょうか。

この問題の回答は、単純に一つに絞ることは難しく、状況により変わってきます。

どういった目的で衣装・装飾品を利用したのかによって、勘定科目が変わる

他の勘定科目にも言えることですが、出費に対して特定の勘定科目を決める場合、摘要(出費等の目的・理由)が重要になります。

極端な例として、自動車整備業で顧客向け商品を仕入れた場合は「仕入」の勘定科目を使うのが適切ですが、それを車に使うパーツだからといって拠店が「車両費」の勘定科目で処理してしまうと、多くの経理担当者はどうしてそんな処理が行われたのか、頭を抱えてしまうはずです。

衣装・装飾品に関しても同様で、社内レクで使用したのか、販促イベントで使用したのかによって、それらの処理が変わってきます。

ただ、事業の規模によっては使える勘定科目が限られてくるため、それほど多くの選択肢があるわけではありません。

個人事業主は基本的に「消耗品費」を使う

主に一人で仕事を行う一人法人や個人事業主の場合、業務上の都合から自分で使用するために使った衣装・装飾品は、基本的に消耗品費で処理します。

相手科目は、どのような支払方法だったのかによっても変わってきますが、例えば以下のような例が考えられます。

例)イベントのため劇場で使用するステージ衣装50,000円を、現金で購入した

借方貸方
消耗品費 50,000円現金 50,000円

もし、自分のポケットマネーからお金を出したのであれば、貸方は「事業主借」になります。

注意

注意点として、消耗品費を使える金額は、1着あたり10万円未満であることを押さえておきましょう。

法人が従業員の制服・衣装を用意した場合は「福利厚生費」または「販売促進費」

業務上の都合から、法人が従業員の制服・衣装を用意した場合、その目的によって科目が少し変わってきます。

医療関係者・飲食業のスタッフ共通の制服など、業務上必ず必要な制服に関しては、勘定科目を「福利厚生費」として処理します。

例)コーヒーショップ店舗の新入スタッフ向け制服(15,000円分)を購入し、代金は当座預金から支払った

借方貸方
福利厚生費 15,000円当座預金 15,000円
借方

また、自社製品の展示会など、企業のイメージ戦略の一環として、スタッフに専用の衣装を着用してもらうケースもあると思います。

そのような場合は、あくまでも特定の商品を紹介する販売促進の意向があってのことですから、勘定科目は「販売促進費」として処理します。

例)お盆向け販売イベントを担当する社員分のはっぴ(10,000円分)を購入し、代金は現金で支払った

借方貸方
販売促進費 10,000円現金 15,000円

ちなみに、販売促進費に関しては、こちらも1着あたり10万円未満というルールが適用されます。

衣装や装飾品の金額が高額になった場合は「工具器具備品」の勘定科目を使う

購入した衣装・装飾品の金額が、10万円以上と高額になってしまったら、勘定科目は「工具器具備品」を使います。

例)モデル用のウェディングドレス(50万円)を購入し、代金は当座預金から支払った

借方貸方
工具器具備品 500,000円当座預金 500,000円

また、工具器具備品は資産グループに属する勘定科目なので、原則として後々にわたり減価償却が必要になります。

例)モデル用のウェディングドレス(50万円)につき、定額法で初年度の減価償却を行った。耐用年数は2年

借方貸方
減価償却費 250,000円工具器具備品 250,000円

なお、青色申告者の中小企業等の場合、少額減価償却資産の特例が適用されれば、最高で30万円まで全額を償却することもできます。

衣装等の出費を仕訳する場合は、家事関連費に注意!

注意

主に個人事業主に関連する注意点として、衣装等の出費につき仕訳を切る際は、家事関連費の処理に注意しましょう。

個人は法人と異なり、公私の違いを明確に分けるのが難しい部分があることから、考え方の違いを理解した上で仕訳を切ることが大切です。

高額なものを経費にするには理由が必要

一概には言えませんが、経費として高額なものを計上する場合、相応の理由が求められます。

例えば、高額な腕時計を経費にしようと考えた場合、本当にそれが業務上必要になってくるのかを考えなければなりません。

時計の評論家として雑誌等に寄稿したり、自分が時計を付けている写真をSNS等に掲載したりする場合は、必要経費として考えることができるかもしれません。

また、自分のブランドイメージを顧客にアピールする上で、あえて高級時計を付ける理由があるなら、摘要として成立する可能性はあります。

しかし、取引額がそれほど大きくない業種・時計に関連する仕事を行っていない人などは、高級時計を仕事に使う理由に乏しいため、経費として認められる可能性は低くなります。

高価なものを経費として落としたいなら、業務上「それでなければならない」理由を明確にしましょう。

プライベート用・業務用を兼ねている衣装の場合、切り離せないのが「家事関連費」

チェック

スーツのように、使い方次第でプライベートでも仕事中でも着られる衣装は、基本的に経費に計上するのが難しいと考えられています。

ただ、業務の性質上からスーツの着用が不可欠な業種等の場合、経費として認められるケースはあります。

具体的には、士業や外交員など対外的な印象が重要な職業、講演会などで人前に出ることが多い人などが該当します。

オンオフが分かれやすい個人事業主であれば、個人用・業務用を兼ねているものについては、それぞれのタイミングを日数等で区分して費用を計算する「家事按分」という方法もあります。

家事按分する場合は専門家の視点も取り入れる

スーツ等を家事按分する場合、プライベートで使っている部分と、仕事で使っている部分を明確に分けなければなりません。

事例

例えば、週に2回法律講座のセミナーを開いていて、その際にだけスーツを着ているなら、月に8~10日が仕事で着用せざるを得ないタイミングと判断できます。

月に8日着用するものと考えると、按分のパーセンテージとしては「8日÷30日=0.3」となり、按分率は30%と考えるのが妥当です。

よって、以下のような仕訳を切ることになります。

例)プライベート・業務時に着用するスーツを、現金(6万円)で購入した。按分率は30%。

借方貸方
消耗品費 18,000円
事業主貸 42,000円
現金 60,000円

ただ、モノによっては自分で決めた按分率が妥当と判断されないケースもあります。

よって、按分率で不安を感じることがあれば、税理士など専門家の意見を取り入れることも大切です。

おわりに

衣装・装飾品等を購入した際の勘定科目は、事業規模や用途によって違いがあります。

また、購入金額が大きくなると資産勘定を使うことになるため、減価償却を行う必要性も出てきます。

衣装・装飾品等の仕訳が複雑で悩んでいる個人事業主の方・中小企業の経理を担当されている方は、お気軽に記帳代行お助けマンをご利用ください。

お客様の不安をそのままにせず、最適解をご提案いたします。