今年は赤字になったが申告しなくていい?
青色申告の赤字は3年間繰り越せるって本当?
個人事業主にとって、事業利益が黒字か赤字かは一番の関心事です。黒字のときは確定申告をしていても、赤字のときは申告しているでしょうか。
今回は青色申告における、赤字の場合の確定申告について解説します。
青色申告なら赤字でも申告すべき
青色申告で確定申告しているなら、赤字でも確定申告はするべきです。
青色申告には赤字でも使える特典があり、申告したほうが翌年以降の節税効果を期待できるからです。特典を説明するために、青色申告とは何かといった基本的なところから解説します。
青色申告とは
青色申告とは、確定申告の制度の1つです。
一定の水準で記帳された帳簿で正しい申告をする事業者は、届出をすることにより青色申告事業者になり、所得金額の計算で有利な特典を受けられるようになります。
ただし、青色申告ができるのは、事業所得、不動産所得、山林所得のある人だけです。
つまり、サラリーマンなどの給与所得や副業などの雑所得、配当や株式の所得などには使えません。
青色申告には特典がある
赤字の状況とは、損失申告や損益通算をして赤字が発生した状況のことを指します。
④と⑤それぞれを解説します。
各種の所得金額の損益を通算しても赤字の金額が残ったとき、かつ一定の要件に該当した場合、赤字を繰り越すための申告のことです。
損益通算とは、赤字になった所得を決められた順序で他の所得と相殺して計算することです。
たとえば、事業所得で100万円の赤字、給与所得が100万円あった場合、事業所得と給与所得を相殺すると所得が0円になり、赤字の事業所得だけでなく黒字の給与所得にも税金がかからなくなります。
事業で赤字が出ても他に所得があれば、赤字も確定申告して損益通算を利用することで節税することができます。
ただし、他の所得と相殺できるのは、事業所得、不動産所得の一部、譲渡所得、山林所得の4つの所得から生じた赤字のみです。
純損失を3年間繰越控除できる(損失の繰越し)
青色申告事業者が損益通算をしても赤字が残る場合、その金額を翌年以降3年間繰り越して、各年分の所得金額から控除できます。
また、一部の譲渡損失を除いた赤字全額を、繰り越すことができます。
たとえば、青色申告事業者の最初の年の事業所得が赤字100万円で損失申告を提出し、翌年の事業所得が40万円の黒字、2年後の事業所得が80万円の黒字となった場合の税金計算は次のようになります。
- 最初の年・・・赤字のため税金はなし
- 翌年・・・黒字40万円と最初の年の赤字100万円を相殺すると、黒字がゼロになるため税金はなし(繰り越しできる金額の残りは60万円(100万円-40万円))
- 2年後・・・黒字80万円と繰越控除の残り60万円を相殺して、所得20万円に対して税金が発生する
このように、最初の年の赤字を申告すれば2年後の20万円にだけ税金がかかるのに対して、赤字の申告をしなければ、翌年の40万円と2年後の80万円に税金がかかることになります。
青色申告事業者の損失申告は、翌年以降3年間に渡り大きな節税対策になるのです。
ただし、純損失の繰越控除を受けるためには、赤字の損失申告をしてその後も連続して申告書を提出する必要があります。
所得税法には、以下のように規定されているため参考にしてください。
所得税法 第70条 純損失の繰越控除
…4 第1項又は第2項の規定は、これらの規定に規定する居住者が純損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、かつ、それぞれその後において連続して確定申告書を提出している場合に限り、適用する。…
純損失の繰戻し還付が受けられる(純損失の繰戻し)
青色申告事業者には、もう1つ特典があります。
前年も青色申告をしていれば、純損失の繰り越しの代わりに、赤字が生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。
たとえば、前年の事業所得は70万円の黒字で税金を納付し、今年の事業所得は100万円の赤字となった場合、繰戻し還付の手続きをすれば、前年の黒字70万円と今年の赤字100万円を相殺できます。
その結果、前年の所得は0円となって、前年に納付した税金は全額還付されます。このとき相殺しきれなかった赤字30万円は、翌年以降に繰り越すことが可能です。
損失申告のしかた
損失申告をおこなうには、通常の申告書の他に「申告書第4表(損失申告用)」が必要です。
純損失の繰戻し還付を受けるには通常の申告書とは別に「純損失の金額の繰り戻しによる所得税の還付請求書」を提出します。
詳細は国税庁ホームページをご確認いただくか、税理士にご相談ください。
損失申告を忘れた場合
損失申告を忘れても、青色申告の要件を満たしていれば、期限後申告をすることで純損失の繰越控除を受けることができます。
確定申告は提出したが、申告書第4表(損失申告用)を忘れた場合は、すでに提出した申告書が赤字の申告書なので、損失申告として受け付けてもらえることもあります。
しかし原則は申告書第4表(損失申告用)が必要ですので、そのままにしておかず一度税務署へご確認ください。
期限後申告は青色申告の特典が取り消しになることもあるため、期限内に正確な申告書を提出するようにしましょう。
損失申告ができない損失
給与所得、雑所得、一時所得、退職所得、利子所得、配当所得の赤字や特殊な損失は、他の所得と損益通算ができないため、損失申告ができません。
【まとめ】赤字でも翌年以降のために申告しなきゃ損
青色申告事業者は所得金額が赤字になっても、損益通算や純損失の繰越控除、繰戻し還付を受けることができ、翌年以降大きな節税効果を期待できます。
通常の申告書の他にも提出する書類はありますが、期限内に正確な損失申告を提出して節税しましょう。
青色申告事業者が赤字の際に純損失の繰越控除、繰戻し還付を受けるには、要件を満たす正しい仕訳入力が必要です。
「記帳代行お助けマン」は税理士からも依頼されるベテランのスタッフが記帳作業をおこなうサービスで、青色申告の要件を満たした仕訳入力をできます。
赤字が発生しそうな個人事業主の方は、ぜひ一度お試しください。