はじめに|退職給付引当金とは?

退職給付引当金とは、将来従業員が退職する際に支払う予定の退職金や企業年金などの給付に備えて、あらかじめ計上しておく負債のことです。

中小企業ではあまり馴染みがないかもしれませんが、従業員が複数名いる企業では、適切な会計処理として非常に重要です。

この記事では、退職給付引当金の勘定科目、仕訳方法、計算方法、そして中小企業でも使える簡便法まで、実務で役立つポイントをわかりやすく解説します。

退職給付引当金の会計上の位置付け

退職給付引当金は、将来の退職給付に備える負債性引当金であり、貸借対照表上では「固定負債」に分類されます。

期末時点での負債見積額をもとに、当期費用として損益計算書に「退職給付費用」を計上します。

退職給付の対象には、以下が含まれます。

・一時金による退職金
・確定給付型企業年金(DB)
・厚生年金基金など

勘定科目と仕訳方法

退職給付引当金に関連する主な勘定科目は以下の通りです。

退職給付費用(費用項目)
退職給付引当金(負債項目)

仕訳例:期末引当金の計上

借方貸方摘要
退職給付費用退職給付引当金当期退職給付引当金の計上

すでに支払った退職金がある場合には、以下のように処理します。

仕訳例:退職金支払時の処理

借方貸方摘要
退職給付引当金普通預金退職金支払い分

もし引当金の範囲を超える退職金を支払った場合は、超過分を「退職給付費用」として追加計上します。

計算方法の基本|退職給付債務の算定

原則として、以下の3要素から計算されます。

1.退職給付債務(PBO):将来支払うべき退職金の現在価値
2.年金資産:既に積立てられている資金
3.未認識数理計算差異・過去勤務債務などの調整項目

これらを使って、期末時点の退職給付引当金残高を計算します。

中小企業会計指針では、以下のような簡便法(概算法)の使用が認められています。

退職給付引当金 = 退職金見込額 × 勤務年数 ÷ 定年年齢

たとえば、以下のようなケース

・退職金見込額:300万円
・勤務年数:10年
・定年年齢:60歳
・現在の年齢:40歳(残り20年)
→ 300万円 ×(10年 ÷ 60年)= 50万円を引当金として計上

このようにして、将来の退職金負担を毎期均等に配分する形で計上します。

税務上の注意点

退職給付引当金は、原則として税務上は損金算入できません(一部例外あり)。

そのため、会計上は費用計上されていても、法人税計算上は加算調整(別表四)を行う必要があります。

ただし、実際に支払った退職金については、一定の条件を満たせば損金算入が可能です。


1.一時的に退職金を全額費用計上してしまう → 毎年均等に引当計上する必要あり
2.退職給付費用を「福利厚生費」や「給与手当」として処理 → 勘定科目の選定ミスは財務諸表の信頼性を損ないます
3.税務処理を忘れて法人税の申告漏れ → 別表四・五の処理漏れに注意

まとめ|退職給付引当金は長期的な人件費管理の要

退職給付引当金は、単なる数字上の引当ではなく、将来の人件費支出を見据えた重要な管理指標です。

特に複数の従業員を抱える中小企業では、計画的な退職給付引当の導入が、経営の安定性を高めることにつながります。

仕訳処理、勘定科目、計算方法、税務対応まで正確に対応するには、専門知識と実務経験が欠かせません。

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