はじめに

事務所や店舗、倉庫などを借りている法人・個人事業主にとって、定期的に支払う「賃貸借契約の更新料」は避けて通れないコストです。
しかしこの更新料、「経費にしていいの?」「どの勘定科目で仕訳すればいい?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

実は、賃貸更新料は経費として計上可能ですが、契約内容や支払のタイミングによって処理方法が異なります。
この記事では、更新料の正しい勘定科目の選び方と、実務で使える仕訳の考え方を詳しく解説します。

賃貸更新料とは?

賃貸更新料とは、賃貸借契約の期間を延長する際に貸主(オーナー)へ支払う費用のことです。
通常、契約期間が2年の場合、2年ごとに「家賃の1か月分」などを更新料として支払うケースが多いです。

更新料は「契約を継続するための対価」であり、次の契約期間の使用権を得るための支払いです。
そのため、経費(損金)として処理することが認められています。

賃貸更新料の勘定科目は?

更新料をどの勘定科目で処理するかは、賃貸物件の用途によって変わります。
以下の表で整理しましょう。

物件の用途勘定科目会計上の区分備考
事務所・店舗・倉庫など地代家賃販売費及び一般管理費更新料は「家賃の一部」として処理
住居兼事務所(按分)地代家賃(事業分のみ)販売費及び一般管理費事業割合で按分計上
個人事業主の自宅(事務所利用なし)経費計上不可生活費扱い(経費にできない)
土地の賃借(駐車場・資材置場など)地代家賃販売費及び一般管理費契約更新分の支払

つまり、賃貸物件が事業に使われているかどうかがポイントです。
自宅や私的な住居の更新料は経費になりませんが、事務所や店舗であれば全額経費として計上可能です。

更新料を経費にできる理由

更新料は、単なる「契約延長の手数料」ではなく、一定期間の使用権を継続するための費用です。
税務上は、「支払期間に対応する費用」として認められており、次のように処理します。

  • 契約期間が1年以内:支払時に全額経費計上(家賃の一部)
  • 契約期間が複数年:期間に応じて「前払費用」として按分処理

つまり、支払のタイミングではなく、「どの期間の経費か」で判断する点がポイントです。

更新料の仕訳方法(法人・個人事業主共通)

ここでは、代表的な3つのケースで仕訳を紹介します。

ケース①:契約期間1年の更新料を支払った場合

更新料を支払った時点で全額経費として処理します。

借方 地代家賃 100,000円 / 貸方 現金 100,000円
(事務所の賃貸契約更新料として)

契約期間が1年以内の場合、全額をその年の経費に計上して問題ありません。

ケース②:契約期間2年など、複数年にまたがる場合

契約更新料が2年分など長期に及ぶ場合は、「前払費用」として処理します。

借方 前払費用 200,000円 / 貸方 現金 200,000円
(2年分の更新料支払)

翌期以降、対応する期間ごとに「地代家賃」として振替処理します。

借方 地代家賃 100,000円 / 貸方 前払費用 100,000円
(1年分を経費化)

→ 支払時に全額経費にせず、期間按分することで正確な期間損益を反映できます。

ケース③:居住兼事務所で按分する場合

自宅の一部を事業利用している個人事業主の場合、事業利用割合分のみ経費計上します。

たとえば、居住面積の40%を事務所として利用している場合:

借方 地代家賃 40,000円 / 貸方 現金 100,000円
(更新料のうち40%を経費として計上)

生活費分(60%)は経費になりません。

更新料に消費税はかかる?

結論、課税取引ではなく「不課税」です。
土地や建物の貸付は原則として消費税の対象外(不課税取引)に該当します。

そのため、更新料も家賃と同様に消費税を含めない金額で処理します。
もし請求書に消費税が記載されている場合は、貸主が誤って課税している可能性もあるため、確認が必要です。

更新料と礼金・保証金・敷金との違い

賃貸契約時に発生する費用には、更新料以外にも似た名称の支出があります。
それぞれの会計処理を整理しておきましょう。

名称内容勘定科目会計上の扱い
礼金契約時の謝礼地代家賃経費(支払時処理)
保証金契約保証のための預け金差入保証金資産計上(返還時処理)
敷金原状回復費用の担保差入保証金資産計上(返還時に精算)
更新料契約更新の対価地代家賃(または前払費用)経費計上可

更新料と礼金は性質が似ていますが、礼金=新規契約の謝礼、更新料=契約継続の対価という点で異なります。

更新料を経費にできないケース

以下のような場合、更新料を経費計上することはできません。

  1. 自宅など私的利用のための支払い
     → 生活費扱いであり、経費にはできません。
  2. 事業と関係ない物件の更新
     → 例えば、代表者個人の自宅名義の契約は法人経費にできません。
  3. 法人契約でも、代表者個人が実質利用している場合
     → 税務調査で否認される可能性があります。

事業利用と明確に区分するためには、契約書の名義や物件用途をきちんと整理しておきましょう。

まとめ:賃貸更新料は「期間按分」で正確に経費計上しよう

  • 賃貸更新料は事業用物件なら経費として計上可能
  • 契約期間が1年以内なら全額経費、複数年なら「前払費用」で按分
  • 勘定科目は「地代家賃」、消費税は不課税
  • 自宅や個人利用分は経費不可、事業割合で按分が必要

更新料の処理は一見シンプルですが、期間按分や按分比率の設定など、細かい判断が求められる項目です。
正しい処理を行えば、経費計上の漏れを防ぎ、税務上も安心です。

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