はじめに

自営業をしていると、配偶者や子どもなど家族に手伝ってもらうことは珍しくありません。

「家族だから給与を払ってもいいのか?」
「税務署への届出は必要?」
「社会保険はどうなるの?」

といった疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

実は、家族を雇うこと自体は合法 ですが、正しい手続きを踏まないと「給与を経費にできない」「税務調査で否認される」といったリスクが生じます。

この記事では、自営業者が家族を合法的に雇用するための手続きと注意点 をわかりやすく解説します。

家族を雇用してもOK!ただしルールあり

自営業者が家族を雇うことは、税法上も認められています。
ただし、家族だからこそ「形式だけの雇用」や「税金逃れ」を疑われやすいため、税務上の要件を満たすことが前提 です。

税法上、家族に給与を支払うケースは次の3つに分けられます。

1.青色申告者が家族を雇う(青色事業専従者給与)
2.白色申告者が家族を手伝わせる(専従者控除)
3.事業とは別に、一般の従業員として雇用する

それぞれ手続きや税務処理の扱いが異なります。

① 青色申告者が家族を雇う場合:青色事業専従者給与

最も一般的なのが、青色申告をしている個人事業主が家族に給与を支払うケース です。

この場合、「青色事業専従者給与」として、支払った給与を 経費として全額計上可能 です。

対象になる家族の条件

以下の条件をすべて満たす必要があります。

・申告者と 生計を一にする 配偶者または15歳以上の親族
・その年の 6カ月超、事業に専ら従事していること
・「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していること

手続きの流れ

  1. 届出書を税務署に提出
     → 開業時または給与支給を開始する前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出。
  2. 勤務実態を記録
     → 労働日数・勤務内容・労働時間を帳簿や日報で残す。
  3. 給与水準を適正に設定
     → 同業他社で同じ業務をする人と比べて不自然に高額でないこと。
  4. 実際に支払い、記録を残す
     → 給与明細や振込記録を保管。

経費計上のポイント

青色申告者は、実際に労務提供があり、給与が妥当であれば全額経費 にできます。
ただし、仕事を手伝っていない家族や、金額が過大な場合は税務署に否認される恐れがあります。

② 白色申告者が家族を雇う場合:専従者控除

白色申告者の場合は、青色のように実際の給与額を全額経費にすることはできません。

その代わりに「専従者控除」という制度があり、定額の控除額を所得から差し引く ことができます。

控除できる金額

  • 配偶者:最高86万円
  • その他の親族:最高50万円

この金額はあくまで上限であり、青色のように実際に支払った金額ではありません。
節税効果を最大化したい場合は、青色申告に切り替える のがオススメです。

③ 一般従業員として雇う場合(親族でもOK)

配偶者や子どもであっても、他の従業員と同じ条件・勤務体系で雇う場合 は、通常の「給与」として処理できます。

ただし、

・勤務時間や仕事内容を明確にする
・給与を他の従業員と同水準に設定する
・実際に働いていることを証明できるようにする
といった点が重要です。

給与支払いが不自然な場合は、「経費目的の仮装」とみなされる可能性があります。

扶養・社会保険の注意点

家族に給与を支払う場合、所得税だけでなく扶養・社会保険の関係にも注意が必要です。

1. 扶養控除から外れる可能性

家族の給与収入が 103万円を超えると扶養控除から外れ、所得税や住民税が発生します。
さらに、130万円を超えると社会保険の扶養からも外れる 場合があります。

したがって、給与をいくらに設定するかは「税金・社会保険の両面」で慎重に検討する必要があります。

2. 国民年金・健康保険の加入

扶養から外れた家族は、自分で国民健康保険・国民年金に加入し、保険料を支払うことになります。
経費節税だけを目的に給与を出すと、結果的に家計の負担が増えることもあるので注意しましょう。

税務調査で見られるポイント

税務署は「家族給与」を厳しくチェックします。
以下のような場合、給与の一部または全部が否認されるリスクがあります。

  1. 届出をしていない(青色申告者)
     → 届出なしの給与は経費になりません。
  2. 実態がない(実際に働いていない)
     → 名義だけで支払っていると認められません。
  3. 給与額が高すぎる
     → 他社の相場を超える額は「生活費」とみなされます。
  4. 現金払いで証拠がない
     → 振込記録や給与明細がないと「支払った証拠」が残りません。

給与設定の目安

「家族にいくら払えばいいの?」という質問もよくあります。
目安としては、その人が実際にしている仕事を外注したらいくらかかるか を基準にします。

例えば:

・経理・記帳作業を週2回手伝っている → 月2〜3万円程度
・フルタイムで農作業や店舗対応をしている → 月10〜15万円程度
・事務や雑務中心 → 月5万円前後

不自然に高い給与を設定すると、税務署から指摘される可能性があります。

手続きのまとめ

手続き内容青色申告者白色申告者
税務署への届出青色事業専従者給与の届出書が必要不要
給与を経費にできるか全額可能(妥当額に限る)定額(専従者控除)
扶養控除原則外れる(収入103万円超)原則外れる
社会保険130万円超で扶養から外れる同様

まとめ:家族雇用は「届出」「実態」「適正額」がカギ

自営業者が家族を雇うことは節税にもなりますが、手続きを誤ると逆効果 です。

・税務署への届出を忘れない
・実際に働いていることを記録する
・給与水準は相場に合わせる
・扶養・社会保険の影響を確認する

この4点を押さえておけば、合法的かつ効率的に家族を雇用できます。

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