はじめに

取引先や顧客とのトラブルで発生する「損害賠償金」。
支払う側にとっては思わぬ出費であり、受け取る側にとっては臨時収入となります。

そんなとき、

「この損害賠償金って経費になるの?」
「どの勘定科目を使えばいい?」
「法人と個人事業主で扱いは違うの?」

と迷う人も多いでしょう。

この記事では、損害賠償金の正しい勘定科目の選び方から、法人・個人事業主の税務上の違い、消費税の扱いまでわかりやすく解説します。

損害賠償金とは?

損害賠償金とは、他者に損害を与えた場合に、その損失を補填するために支払う金銭をいいます。
たとえば以下のようなケースが典型的です。

  • 商品の納期遅延や欠陥による違約金
  • 業務上のミスによる顧客損害の補填
  • 交通事故・物損事故の弁償金
  • 解約や契約不履行に伴う賠償金

つまり、契約違反・過失・事故などの損害補填として支払う金銭を総称して「損害賠償金」と呼びます。

勘定科目の基本ルール

損害賠償金は、「支払う側」と「受け取る側」で会計処理が異なります。

区分勘定科目消費税区分会計上の扱い
支払った場合雑損失 または 損害賠償金不課税費用(損金)
受け取った場合雑収入不課税収益(益金)

ただし、損害の原因や性質によって、勘定科目や税務上の扱いが変わるため注意が必要です。

【支払う側】損害賠償金を支払ったときの勘定科目

① 営業活動に関連する損害賠償金

営業上の取引ミスや納期遅延など、事業活動に付随して発生した賠償金は「雑損失」または「損害賠償金」で処理します。

仕訳例
借方 雑損失 100,000円 / 貸方 普通預金 100,000円  
(納期遅延による損害賠償金を支払った)

このような損害賠償金は経費(損金)として認められるのが原則です。

② 業務外・私的な原因による損害賠償金

交通事故や私的行為による損害賠償の場合、事業に直接関係しないため経費になりません

仕訳例
借方 事業主貸 200,000円 / 貸方 普通預金 200,000円  
(私用中の交通事故による損害賠償金を支払った)

事業に無関係な支出のため、経費ではなく「事業主貸(個人)」または「役員貸付金(法人)」で処理します。

③ 従業員の過失による損害賠償金を会社が負担した場合

会社が従業員の過失分を肩代わりして支払う場合は、会社経費として「雑損失」で処理可能です。

ただし、従業員の故意や重過失による場合には、給与課税の可能性があるため注意が必要です。

④ 保険金で補填される場合

賠償金支払いを保険で補填できる場合、支払と保険収入を分けて処理します。

借方 雑損失 500,000円 / 貸方 普通預金 500,000円 (賠償金支払)
借方 普通預金 500,000円 / 貸方 雑収入 500,000円 (保険金受取)

保険金受取分は「雑収入」として益金算入します。

【受け取る側】損害賠償金を受け取ったときの勘定科目

損害賠償金を受け取った場合は、原則として雑収入で処理します。

仕訳例
借方 普通預金 200,000円 / 貸方 雑収入 200,000円  
(顧客から損害賠償金を受け取った)

営業上発生した損害(例:契約解除や納品トラブル)に対する補償金であっても、性質的には「臨時収益」であるため、通常は雑収入で問題ありません。

個人事業主と法人の税務上の違い

損害賠償金は、個人事業主と法人で経費算入の考え方が異なります。

区分経費算入の可否備考
法人原則損金算入可能事業活動に関連していればOK
個人事業主事業関連のみ経費可私的な支出はNG

① 法人の場合

法人は、損害賠償金が会社の業務遂行上のミスや事故に基づくものであれば損金算入可能です。

ただし、

  • 役員の私的行為
  • 法令違反や罰金に類するものは損金不算入(経費にできない)となります。

② 個人事業主の場合

個人事業主は、「事業と関係のある損害賠償金」だけ経費にできます。

たとえば、

  • 商品の欠陥に対する補償 → 経費OK
  • プライベートな交通事故の弁償 → 経費NG

このように、事業に直接関連するかどうかが判断基準となります。

税務上の注意点

注意①:罰金・科料・過料は経費にできない
交通違反の罰金や行政罰などは、「社会的制裁」に該当し、税法上は損金不算入(経費にできない)です。
これは法人・個人ともに共通です。

注意②:損害賠償金の支払い原因を明確に
税務調査では、「その損害が本当に業務に関係しているのか」が問われます。
請求書・契約書・示談書などを保管し、支払理由を明確にしておきましょう。

注意③:保険金補填との相殺に注意
保険金で損害賠償金が全額または一部補填される場合、
保険金受取分を「収益」として計上し、差額だけを損金にします。

よくある実務例

取引内容勘定科目(支払側)勘定科目(受取側)
納期遅延による賠償雑損失雑収入
交通事故の修理費雑損失(事業用)雑収入(補償受取)
個人の私用事故事業主貸(経費外)
保険金で補填雑収入(保険金受取)

まとめ

項目内容
支払時の勘定科目雑損失・損害賠償金(事業関連)/事業主貸・役員貸付金(私的)
受取時の勘定科目雑収入
消費税不課税取引
経費算入事業関連のみ可(罰金・過料は不可)
法人との違い法人は業務関連で損金算入可、個人は事業関連に限定

損害賠償金は「支払う側・受け取る側」で会計処理が異なり、さらに原因・目的によって経費になるかどうかが変わる点が重要です。
請求書・契約書の内容を確認し、性質に合った勘定科目を選びましょう。

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