はじめに

災害支援、NPO団体への支援、地域貢献など、事業をしていると「寄付」をする機会は少なくありません。
しかし、経理の現場ではよくこんな疑問が出ます。

「寄付金って経費になるの?」
「勘定科目は“寄付金”でいいの?」
「どんな寄付なら損金にできるの?」
実は、寄付金の扱いは非常に慎重に判断する必要があります。
税務上は「寄付=すべて経費」とはならず、相手先や目的によって損金算入できるかどうかが決まるからです。
この記事では、寄付金の正しい勘定科目・仕訳方法・税務処理のポイントを、法人・個人事業主それぞれの立場からわかりやすく解説します。
寄付金とは?

寄付金とは、対価を求めずに金銭や物品を贈与する支出のことです。
具体的には次のような支出が該当します。
・災害支援のための義援金
・公共団体(市区町村など)への寄付
・学校や病院への寄付
・NPO法人・社団法人への寄付
・募金活動への協力金
つまり、見返りがなく「純粋な支援・援助目的」で支払ったお金です。
寄付金の勘定科目

原則として、寄付に関する支出は「寄付金」という勘定科目で処理します。
会計上は「営業活動以外の支出」として処理するため、営業外費用の区分に含めます。
仕訳例:災害義援金を振込で送金した(10,000円)
借方 寄付金 10,000円
貸方 普通預金 10,000円
「寄付金」と「交際費」「広告宣伝費」の違い

寄付金と似た性質の支出でも、目的によっては別の科目で処理する方が妥当な場合があります。
特に「宣伝効果」や「取引関係維持」を目的とした支出は、寄付金ではなく他の科目で処理することが可能です。
支出の目的 | 勘定科目 | 税務上の扱い |
---|---|---|
純粋な支援・援助 | 寄付金 | 損金算入に制限あり |
取引先や団体との関係維持 | 交際費 | 一定の損金算入限度あり |
広告掲載・スポンサー協力 | 広告宣伝費 | 全額損金算入可 |
従業員や地域への社会貢献 | 福利厚生費・地域貢献費 | 条件次第で損金算入可 |
たとえば、地元イベントのスポンサーとして協賛金を支払った場合、「広告宣伝費」で処理できることもあります(広告掲載などの対価がある場合)。
寄付金の種類と損金算入限度額(法人の場合)

法人が支出した寄付金は、全額を経費にできるわけではありません。
寄付先によって「全額損金算入できるもの」と「一部しか損金にできないもの」に分類されます。
1. 国・地方公共団体への寄付金
→ 全額損金算入可
(例:市へのふるさと寄付、災害復興支援金など)
借方 寄付金 100,000円
貸方 普通預金 100,000円
2. 認定NPO法人・公益法人などへの寄付金
→ 一定額まで損金算入可(「特定公益増進法人等寄付金」)
限度額計算式:
(資本金等 × 0.25% + 所得金額 × 2.5%)× 1/2
※認定NPO法人かどうかは、国税庁のホームページで確認できます。
3. 一般の寄付金(上記以外)
→ 上記よりもさらに厳しい限度額で損金算入可能
限度額計算式:
(資本金等 × 0.25% + 所得金額 × 2.5%)× 1/4
※上限を超える部分は損金不算入となり、経費にはできません。
個人事業主の場合:寄付金控除を活用できる

個人事業主の場合、寄付金は基本的に事業経費にはなりません(事業に直接関係しないため)。
ただし、確定申告時に「寄付金控除」として所得控除を受けることができます。
寄付金控除が受けられる主な寄付先
・国・地方公共団体(例:ふるさと納税)
・認定NPO法人・公益法人
・日本赤十字社・社会福祉法人 など
ふるさと納税の場合は、実質2,000円の自己負担で寄付が可能になります。
特殊なケース別の処理方法

① 取引先の創立記念行事への協賛金
パンフレットや看板に社名が掲載されるなど、広告効果が見込まれる場合は広告宣伝費で処理可能。
→ 全額損金算入可
借方 広告宣伝費 30,000円
貸方 現金 30,000円
② 地元の祭りや町内会への協賛金
事業の所在地での社会的信用・関係維持を目的とする場合、交際費または地域貢献費として処理します。
借方 交際費 10,000円
貸方 現金 10,000円
③ 災害義援金・チャリティーへの寄付
個人・法人ともに「寄付金」として処理。
公益性が高い場合は損金算入可能です。
借方 寄付金 50,000円
貸方 普通預金 50,000円
④ 従業員やその家族へのお見舞金
これは寄付金ではなく、福利厚生費または雑給で処理します。
借方 福利厚生費 5,000円
貸方 現金 5,000円
税務上の注意点

1. 「寄付金」と「協賛金」を混同しない
協賛金でも広告効果(社名掲載・PR効果)がある場合は「広告宣伝費」。
純粋な支援金で見返りがない場合のみ「寄付金」。
2. 損金算入限度を超える部分は要注意
限度額を超えた分は損金不算入(=法人税の計算上、経費にできない)になります。
寄付の累積が多い法人は、毎年計算を見直しましょう。
3. 証拠書類の保管
寄付金受領証、振込明細書、寄付先の案内文書など、支払い根拠となる書類は必ず保存しましょう。
特に税務署からの確認対象になりやすい項目です。
まとめ:寄付金の経理は「相手」と「目的」で判断する!

・勘定科目は基本的に 「寄付金」
・ただし、広告効果・取引関係維持がある場合は「広告宣伝費」「交際費」など別科目の可能性あり
・法人は寄付先によって 損金算入限度額 が変わる
・個人事業主は経費にできないが、寄付金控除で所得控除可能
・証拠書類の保存と目的の明確化が重要
寄付は社会的意義のある支出ですが、経理・税務上は慎重な処理が求められます。
「善意の寄付でも、処理を誤ると経費として認められない」という点を意識しましょう。
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