はじめに

銀行融資を受ける際、「信用保証協会の保証付き融資」を利用したことがある方も多いでしょう。
このときに支払う「信用保証料」は、融資をスムーズに受けるために必要な費用ですが、
「どの勘定科目を使うの?」「消費税はかかるの?」「経費にできるの?」と迷うケースが多い項目です。
本記事では、信用保証料の正しい勘定科目と仕訳方法を解説しながら、経費処理のポイント・注意点まで詳しく紹介します。
信用保証料とは?

信用保証料とは、中小企業や個人事業主が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会へ支払う保証の対価です。
融資を受けるときに「信用保証協会」があなたの保証人となり、万が一返済ができなくなった場合に、銀行へ代わりに返済を行います。
その“保証”を受けるための費用が「信用保証料」です。
信用保証料の特徴
- 保証協会に支払う費用であり、銀行には支払わない
- 一括前払いが一般的(融資時にまとめて支払い)
- 融資金額・期間・信用状況に応じて金額が決まる
つまり、「借入のための付随費用」であり、税務上は経費(損金)として処理可能です。
信用保証料の勘定科目は?

信用保証料は、融資手数料や利息と同様に「支払利息」ではなく「支払手数料」または「支払保証料」で処理します。
| 勘定科目 | 使用ケース | 会計上の分類 | 消費税区分 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 保証協会への信用保証料 | 販売費及び一般管理費(または営業外費用) | 不課税取引 |
| 支払保証料 | 保証契約関連に特化して処理したい場合 | 同上 | 不課税取引 |
| 前払費用 | 保証期間が複数期にわたる場合(按分処理) | 流動資産 | 不課税取引 |
どの科目を使っても問題ありませんが、「支払手数料」または「支払保証料」に統一するのが一般的です。
信用保証料の仕訳例

① 融資時に信用保証料を一括で支払う場合
融資実行時に保証料を銀行経由で支払うことが多いです。
借方 支払手数料 50,000円 / 貸方 普通預金 50,000円
(信用保証協会保証料の支払)
この場合、支払った期に全額経費計上可能です。
② 複数年(例えば3年)にわたる保証料を支払った場合
保証期間が1年以上に及ぶ場合は、前払費用として按分処理する必要があります。
仕訳例(3年間保証で保証料15万円):
借方 前払費用 150,000円 / 貸方 普通預金 150,000円
(3年分の信用保証料支払)
決算時(1年分を費用化):
借方 支払手数料 50,000円 / 貸方 前払費用 50,000円
(1年分の保証料を当期経費に振替)
→ このように、期間対応の原則に基づき、保証期間に応じて経費化するのが正しい処理です。
③ 途中で融資を完済した場合(保証期間短縮)
予定より早く返済を終えた場合、信用保証協会から一部の保証料が返還されることがあります。
仕訳例(返金3万円の場合):
借方 普通預金 30,000円 / 貸方 支払手数料 30,000円
(保証料返還分)
→ 返金分は費用の戻りとして「支払手数料」を減額処理します。
消費税の取扱い

信用保証料は消費税の課税対象外(不課税取引)です。
理由は、信用保証協会が提供する「信用保証」は金融取引に該当し、消費税法上の不課税取引として扱われるためです。
| 区分 | 消費税の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 保証協会への信用保証料 | 不課税 | 消費税法別表第一 第7号(金銭債権の保証) |
| 銀行への融資手数料 | 不課税 | 金融取引に該当 |
| 民間保証会社への保証料 | 課税 or 不課税(契約内容による) | サービス提供の性質に応じて判断 |
そのため、会計ソフト上では「不課税区分」で入力しましょう。
信用保証料は経費にできる?税務上の扱い

信用保証料は、事業のための借入に伴う費用であるため、税務上も経費(損金)に算入可能です。
ただし、次の2点に注意が必要です。
① 個人事業の「事業用借入」であること
プライベートなローンや個人借入に対する保証料は経費になりません。
あくまで事業の資金調達に関する保証料のみが経費対象です。
② 法人の場合は「支払手数料」または「営業外費用」
法人では、信用保証料は営業活動に直接関係しないこともあるため、
損益計算書上は「営業外費用」として表示されることもあります。
ただし、会計処理上はどちらでも問題なく、税務上の扱いも変わりません。
信用保証料の金額の決まり方

信用保証料は、主に以下の3つの要素で決まります。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 保証対象の融資額 | 借入金額が大きいほど保証料も高額になる |
| 保証期間 | 期間が長いほど保証料も増える |
| 保証料率 | 借入先・業種・信用力に応じて年0.4〜1.9%程度 |
たとえば、500万円の融資・保証期間3年・料率1.0%の場合:
→ 500万円 × 1.0% × 3年 = 15万円の保証料 となります。
信用保証料に関する注意点

注意①:前払費用処理を忘れない
保証期間が翌期以降に及ぶ場合、当期分のみ経費化し、残りは前払費用にする必要があります。
税務調査でもよく確認されるポイントです。
注意②:返還金は「収益」として計上
途中返済などで保証料の一部が戻った場合は、「雑収入」ではなく「支払手数料の減額」として処理するのが適切です。
注意③:民間保証会社利用時の消費税判断
銀行によっては、信用保証協会ではなく民間保証会社を利用するケースもあります。
この場合は保証料が課税取引になる可能性があるため、請求書に「消費税区分」が明記されているか確認が必要です。
実務上のポイントまとめ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 勘定科目 | 支払手数料 or 支払保証料 |
| 消費税 | 不課税取引(保証協会への支払) |
| 経費計上 | 事業用借入に限り可 |
| 按分処理 | 期間が複数年に及ぶ場合は前払費用処理 |
| 返還時処理 | 支払手数料の減額で処理 |
信用保証料は、融資に伴う重要な費用であり、処理を誤ると税務上のトラブルにつながることもあります。
請求書・契約書を保管し、保証期間と金額を明確にしておくことが大切です。
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