自社の敷地に新しくフェンスを設置しようと考えている場合、金額によっては一括で費用計上ができない可能性があります。
また、フェンスの素材によって法定耐用年数が異なりますから、減価償却の期間も変わってきます。
丈夫な素材を使えば使うほど、法定耐用年数は長くなりますが、単純に素材の強さだけで壊れにくさ・使いやすさが決まるわけでもありません。
また、フェンスの耐用年数を決める基準は法定耐用年数だけではありませんから、自社の事情に合わせて適切に選びたいところです。
この記事では、フェンスを設置しようと考えている中小企業等の総務・経営者の方向けに、フェンスの減価償却・法定耐用年数について解説します。
一口に「フェンスの耐用年数」といっても種類はいろいろ
塀やフェンスを自社の敷地に設ける理由はさまざまであり、主な目的としては以下のようなものがあげられます。
- 台風や大雨など、悪天候時の防風対策
- 交通量が多い道路に事務所等が面しているため、自動車の騒音対策
- 敷地内に不審人物が入ってこないよう、高い塀を設ける防犯対策
その他、デザイン性の高いフェンスを設けることで、来客時におしゃれな雰囲気を演出する目的なども考えられます。
経理処理上は、経年劣化にともなうフェンスの価値を決める概念として「法定耐用年数」があります。
しかし、フェンス自体の見た目や機能性が維持されているかどうかは、年数の経過だけでは判断できず、周辺環境や利用目的等によって劣化の早さも異なります。
まずは、フェンスの耐用年数を決定する基準について、いくつか主だったものをご紹介します。
法定耐用年数(簿記的耐用年数)
法定耐用年数は、簿記的耐用年数とも呼ばれ、事業に使う資産の「使用可能と見込まれる期間」を指します。
土地など一部の例外を除いて、基本的に資産は使い続けているうちに劣化していき、法定耐用年数が経過した時点でその価値を失う、という考え方を数値化したものです。
法定耐用年数は、一般的に維持のため必要と考えられるメンテナンスを加えることを前提として算出されているので、モノによっては期間が長く感じられることもあるかもしれません。
ただ、会計上は重要な基準であり、資産の減価償却は法定耐用年数を基準に計算されます。
経済的耐用年数
経済的耐用年数は、維持管理に発生する費用を考慮しても、モノの経済的な価値が存在している期間のことを指します。
もう少し具体的に言うと、継続的に使用するための補修・修繕費その他の費用が、改築費用を上回る年数のことです。
耐用年数の概念としては、もっとも長い期間が対象となる年数で、最終的に資産が取り除かれる期間を寿命と考えて算出されます。
修理しながらだましだまし使っていたものが、何をどうしても使えなくなった時期が、経済的耐用年数の限界ということになります。
物理的耐用年数
物理的耐用年数は、使われている資材そのものが耐久できる年数のことを指します。
例えば、フェンスに木材を使用している場合、フェンスの形状自体に大きな変化はなかったとしても、一つひとつのパーツにガタがきているケースは十分考えられます。
これはブロック塀や金属部分についても同様で、日々の天候の変化や紫外線の影響などを受け続けていると、強い衝撃がなくても劣化は進んでいきます。
その結果、本来要求される限界性能を下回ってしまった場合、その時点が物理的耐用年数ということになります。
社会的耐用年数
社会的耐用年数は、資産自体は当初の目的を達成できる価値を維持しているにもかかわらず、使用目的が当初の計画から変化したり、技術革新や社会的要求が向上したりして陳腐化してしまう年数のことを指します。
フェンスで言えば、機能に問題があるのではなく、デザインの古さ・色あせ・経年劣化にともなう見栄えの悪さなどを理由に新しいものへと交換するケースが該当します。
社会的耐用年数に関しては、必ずしも機能低下が関係するとは限らず、極端な話「持ち主の気持ちの移り変わり」によって年数を迎えることも考えられます。
総じて法定耐用年数よりも社会的耐用年数の方が期間は短い傾向にありますから、社会的耐用年数を基準に資産の買い替えを検討する場合、経理上は除却の手続きが必要になってくるでしょう。
フェンスの法定耐用年数
フェンスに設けられた法定耐用年数は、フェンス全般に一律の年数が設定されているわけではなく、フェンスに用いられている素材次第で年数が変化します。
設置を検討する際は、素材と用途を比較して判断することをおすすめします。
国税庁は素材によって耐用年数を分けている
国税庁によると、塀やフェンスの耐用年数は、素材ごとに以下のような形で分かれています。
素材 | 耐用年数 |
---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造、または鉄筋コンクリート造 のもの | 30年 |
コンクリート造、またはコンクリートブロック造のも の | 15年 |
れんが造のもの | 25年 (塩素その他の著しい腐食性を有する気体の影響を受けるものは7年) |
石造のもの | 35年 |
土造のもの | 20年 |
金属造のもの | 10年 |
木造のもの | 10年 |
上記の年数を見る限り、丈夫な素材ほど耐用年数は長くなる傾向にあります。
「強い素材」なら長く使える?
素材と耐用年数の関係だけを見れば、できるだけ丈夫な素材を長く使った方が経済的にも思えます。
しかし、自社の事情によって交換が必要になる場合もあるため、単純に法定耐用年数の長さだけで素材を選ぶことが賢明とも言い切れません。
取得価額が高いフェンスの場合、一括で費用として処理できないというデメリットもありますから、経理処理の兼ね合いから考えれば、そこまで大きな投資を検討する必要はないかもしれません。
フェンスの設置を検討する場合は、頑丈さだけで考えず、目的を考えた投資が必要です。
どのような目的で利用するのかが重要
目的を考えた投資とは、すなわち「どのような目的でフェンスを使用するのか」を考えた上で設置を検討することを意味します。
天然の木材を使っている場合は、腐ってしまうリスクがあるので定期的なメンテナンスが必要ですが、アルミやスチール・樹脂等を素材に使ったフェンスなら、かなりの長期間にわたって使用できるでしょう。
また、フェンスは一度設置してしまえば、事故や自然災害などよほどのことがない限り、物理的な理由で壊れにくいものです。
しかし、風の影響を受けやすい目隠し目的のフェンスを設置してしまうと、台風等の被害を受けるリスクは高くなります。
このように、素材や用途によって、フェンスの耐久度や実際に使える年数は変わってくる可能性があるため、実際の使用期間と法定耐用年数は分けて考えることが大切です。
フェンスの減価償却について
フェンスの設置費用は、原則として「構築物」の勘定科目を使い、借方に記載します。
構築物は資産グループに属する勘定科目なので、原則として資産計上後は減価償却が必要です。
ただし、取得価格次第では、費用として計上できたり短期間で減価償却できたりします。
また、一定の条件を満たしている会社は、それなりに高額であっても一括して費用計上ができるため、以下のケースに自社が該当するかどうか検討した上で判断しましょう。
取得価額が10万円未満のものは、費用として処理できる
フェンスの取得価額が合計で10万円未満の場合、少額減価償却資産に該当しますから、消耗品費などの勘定科目を使い費用として処理ができます。
取得価額は、通常1単位として取引される単位ごとに判定され、フェンスが必要と思しき場所すべてに設置した場合の金額が10万円未満であることが条件となります。
取得価額が20万円未満のものは、一括償却資産として処理できる
フェンスの取得価額が合計で20万円未満の場合、原則としては通常の減価償却の方法で処理しますが、一括償却資産として3年間で均等償却することもできます。
本来の耐用年数より短い期間で経費にすることができますし、減価償却の処理も比較的楽になるため、金額が膨らんだ場合は検討したい方法です。
青色申告者の中小企業者等は、少額減価償却資産の特例が適用できる
青色申告者の中小企業等は、少額減価償却資産の特例が適用される条件を満たしていれば、取得価額30万円未満のフェンスにつき、一括して消耗品費などの勘定科目を使い費用計上できます。
ただし、適用を受ける事業年度において、少額減価償却資産の合計限度額が300万円となっているため、他にも特例を適用しているケースがある場合は注意しましょう。
なお、適用される対象の法人は、こちらのページで確認できます。
おわりに
フェンスに使われる素材によって、法定耐用年数は異なるため、単純に長持ちするものを探しているなら素材に注目するのがよいでしょう。
しかし、法定年数の通りにフェンスを使い続けるかどうかは、フェンスのデザインや設置場所の環境によって事情が変わってきます。
素材次第で減価償却の期間も長くなるため、経理処理の負担を軽くしたいのであれば、10~30万円未満の範囲で設置するのが無難です。
もし、減価償却の処理が必要なことが分かり、経理処理に不安を感じている方は、記帳代行お助けマンにご相談ください。