不動産物件の賃貸借契約をするとき、ほとんどの場合に発生する敷金や礼金。
部屋や事務所を借りようとして、ふと
「敷金や礼金はどんな勘定科目にすれば良いんだろう」
と思った人も多いはず。
敷金や礼金は、経費になるのでしょうか?
結論、場合によるので一概には言い切れません。
- 敷金や礼金が経費になる場合
- ケースごとの勘定科目の判断方法
- 経理関係が面倒なときの対処法
敷金や礼金の勘定科目は、場合によって変わるためなかなか複雑です。いつどんな勘定科目にすれば良いのか、ここで覚えてしまいましょう。
この記事では、敷金や礼金の仕訳をするときに記入する勘定科目や、会計処理の方法をわかりやすく解説します。
敷金や礼金は経費になる?仕訳の勘定科目を解説
敷金と礼金は、経費になることがあります。しかし、事業で使うほとんどの場合に、経費にならないと考えて良いです。
そもそも、敷金と礼金とは何かご存じでしょうか?
敷金とは?
敷金とは、賃貸物件を借りる人が、物件のオーナーへ一時的に預けておくお金のことです。
万が一家賃が払えなくなったときや、部屋に大きな損害を与えたときに、敷金が使われることがあります。
住人がいる間オーナーが安心できるように預けておく一時的なお金なので、基本的には退去時に返ってくるものです。
ただし、敷金の一部は清掃費用や原状回復のために使われることも多いです。
礼金とは?
敷金は退去時に返してもらえる可能性がありますが、礼金は原則返却されません。
「この部屋を使わせてくれてありがとう」の気持ちとして、オーナーにプレゼントするのが礼金です。
敷金と礼金の勘定科目は複数存在する!状況よって判断しよう
敷金と礼金の勘定科目は、状況によって複数を使い分けます。
どの勘定科目を使う場合にも、一度使ったものに統一して使い続けるようにするのがおすすめです。
勘定科目は多いほど、管理がしにくくなってしまいます。
敷金の勘定科目まとめ
まずは敷金の勘定科目からみていきます。
敷金のケースごとの科目
一般的な敷金 | 「敷金」「差入保証金」 |
去時に返却されなかった敷金 | 「修繕費」「雑損失」 |
返金額が決められた契約を結んだときの返済されない敷金 | 「権利金」「長期前払費用」 |
戻ってこないとわかっている敷金 | 「解約引き」「敷引き」 |
返済されないぶんの敷金は、税法上の繰延資産として扱われます。原則、「長期前払費用」として資産計上をすることになります。
将来敷金が返還されるという契約の場合、経費とはせず資産計上をしなくてはいけません。
なお、返ってきた敷金は収益や費用ではなく、資産であると考えます。
経費にできるケース:長期前払費用の金額が少額の場合
敷金を経費にできるケースは、勘定科目が「長期前払費用」かつ、費用が20万円未満であるときです。
つまり、賃貸借契約時にすでに返却されないことがわかってるときが当てはまります。
ただし、償却される敷金や礼金などの、建物を賃貸するために必要になった費用の合計が20万円未満という少額であることが条件です。
礼金の勘定科目まとめ
次に、礼金の勘定科目も見ていきます。
礼金のケースごとの科目
20万円未満の礼金 | 「地代家賃」 |
20万円以上の礼金 | 「長期前払費用」 |
礼金が「地代家賃」の場合には、一括で経費費用として処理ができます。
一方で「長期前払費用」の場合は、費用ではなく資産として処理することになります。
契約が5年以上の場合は5年間で減価償却、5年未満の場合は賃貸する期間で減価償却をします。
ケース別!敷金の仕訳方法を解説
上記では、状況別に勘定科目を使い分ける方法をまとめました。
それでは上記を参考にしつつ、より具体的なケース別に分けて、敷金の仕訳方法をみていきましょう。
敷金の仕訳をしなくてはいけないタイミングは、基本的に2回にわけて考えます。
- 契約時
- 解約時
ただし厳密には、契約方法によって毎年会計処理が必要になります。
契約時の仕訳方法
まずは、「契約時の仕訳方法」から解説します。
敷金の仕訳方法は、大きく分けて2通りあります。
- 償却額が決まっている場合
- 償却額が決まっていない場合
それぞれについて解説していきます。
契約時の敷金の仕訳方法①:償却額が決まっている場合
償却額があらかじめ決まっている場合は、3パターン次第で仕訳方法が違います。
償却額が…
- 20万円未満のとき
- 20万円以上で契約期間が5年未満のとき
- 20万円以上で契約期間が5年以上のとき
それぞれの勘定科目と仕訳方法は、下記のとおりです。
【償却額】 | 【勘定科目】 | 【仕訳方法】 |
①20万円未満のとき | 支払手数料 | 敷金の額から償却額を「支払手数料」として差し引いた金額を「差入保証金」として仕訳 |
②20万円以上で契約期間が5年未満のとき | 長期前払費用 | 期末に契約時の契約年数で償却額を均等割りし、償却されるぶんは「支払手数料」として仕訳 |
③20万円以上で契約期間が5年以上のとき | 長期前払費用 | 期末に5年で償却額を均等割りにして、償却されるぶんは「支払手数料」として仕訳 |
契約時の敷金の仕訳方法②:償却額が決まっていない場合
償却額が決まっていない場合は、いくらが償却にあてられるかわからないため、ひとまず全額を資産として会計処理をおこないます。
勘定科目は「敷金」や「差入保証金」と記せば良いです。
敷金が返却されたときに、あらためて仕訳をします。
解約時の敷金の仕訳方法とは?
解約時(敷金が返ってきたとき)の仕訳方法は、返金額が敷金の全額か一部かによって違います。
- 敷金が全額返済されたとき:「差入保証金」として仕訳
- 敷金の一部が償却されたとき:返金分を「差入保証金」、償却分を「修繕費」として仕訳
なお、礼金は敷金の仕訳方法と違うので、あらためて別記事でご紹介します。
敷金や礼金の仕訳は慣れるまで難しい!理由とは?
敷金や礼金の仕訳は、慣れるまでは難しいと感じるかもしれません。
敷金や礼金の仕訳が面倒な理由として、以下のようなケースが想定。
- 返還される敷金が全額か一部かで仕訳が変わる
- 償却期間がある場合は期間次第で会計方法が変わる
- 契約時と解約時でそれぞれ仕訳をする必要がある
- 敷金の償却額が契約時に決まっているかどうかで仕訳が変わる
一度借りた物件を使い続けるなら、契約時と解約時だけに頭を悩ませれば良いだけです。
でも、いくつか店舗を持ったり、移転して契約条件が代わるたびに、仕訳をやり直さなくてはいけません。
面倒だと感じるときは、記帳代行サービスを利用した方が効率的かもしれません。
勘定科目の管理に手が回らない!困ったら記帳代行お助けマンへ
敷金や礼金の仕訳方法は、状況によって違うのでなかなか複雑です。
事業をやりながら簿記の勉強ができる人なら良いですが、そうでないと頭が疲れてしまうかもしれません。
賃貸借や敷金に関する仕訳に限らず、経理には面倒な作業がつきもの。
でも、誰がやっても同じ結果になる経理に、時間をかけるのはもったいないと感じている人も多いはず。
- 勘定科目の仕訳が面倒
- 経理の作業に時間をかけたくない
- 簿記がさっぱりわからない
- 数字でミスをして捕まりたくない
- 経理業務の面倒な部分は誰かにやってほしい
このように感じている方は、「記帳代行お助けマン」までお気軽にご相談ください。
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