はじめに

契約の解除や納期遅延などで発生する「違約金」。
日常の取引ではあまり多くありませんが、いざ発生すると「これって経費になる?」「消費税はかかるの?」「どの勘定科目を使えばいい?」と迷う経理担当者も少なくありません。

実は、違約金の扱いは「支払う場合」と「受け取る場合」で会計処理がまったく異なり、さらに消費税の課税・非課税の判断も複雑です。

この記事では、違約金の正しい勘定科目・仕訳方法・消費税の考え方を、税務の実務に基づいてわかりやすく解説します。

違約金とは?その性質を理解しよう

「違約金」とは、契約違反があった際に相手方に対して支払う賠償金や罰金的な性格の金銭を指します。

代表的なケースは次の通りです。

  • 納期に遅れた場合の遅延損害金
  • 契約を一方的に解除した場合の契約違約金
  • テナント解約に伴う解約違約金
  • 商品納入遅延・不履行による損害賠償金

つまり、違約金は取引上の「ペナルティ」であり、通常の売上・仕入とは異なる性質を持ちます。

違約金の勘定科目|支払側と受取側で異なる

① 支払う側の勘定科目

違約金を支払う場合は、以下の勘定科目を使います。

支払の目的勘定科目会計上の区分消費税区分
契約違反による賠償雑損失営業外費用不課税
納期遅延などの軽微な違反支払手数料 または 雑費販売費及び一般管理費課税(ケースにより)
テナント契約の途中解約地代家賃 または 雑損失販管費不課税(不動産賃貸は原則非課税)

ポイントは、違約金の性質が「契約違反の罰則」か「取引上の追加費用」かで勘定科目が変わるということです。

たとえば「業務委託契約を途中でキャンセルして支払った違約金」は雑損失
「納期遅れに伴う追加支払い」は支払手数料で処理するのが一般的です。

② 受け取る側の勘定科目

逆に違約金を受け取る場合は、次のように処理します。

受取内容勘定科目会計上の区分消費税区分
契約違反に対する損害賠償雑収入営業外収益不課税
納期遅延に伴う補償金受取手数料 または 雑収入営業外収益課税(ケースにより)

つまり、受け取る違約金も「損害の補償」なら不課税、「サービスの対価を兼ねるなら課税」と判断されます。

違約金の消費税区分|課税か不課税か?

違約金で最も間違いやすいのが「消費税の課税・不課税区分」です。
原則として次のように整理できます。

違約金の性質消費税の取扱い理由
契約違反に対するペナルティ不課税対価性がないため課税対象外
サービス提供の対価・追加料金課税役務提供に対する報酬とみなされる
不動産賃貸の解約違約金不課税不動産賃貸そのものが非課税取引
貸倒損害金の回収不課税損害賠償金の一種
キャンセル料(ホテル・セミナーなど)課税提供準備行為が「役務提供」とみなされる

つまり、「契約違反のペナルティ」なら不課税、「サービスの一部」と見なされる場合は課税です。

仕訳例でわかる違約金の処理方法

ケース①:契約解除により違約金を支払った場合

借方 雑損失 100,000円 / 貸方 普通預金 100,000円  
(契約解除に伴う違約金の支払)

→ 損害賠償的性質のため、消費税は不課税。

ケース②:納期遅延により取引先に支払った場合

借方 支払手数料 50,000円 / 貸方 普通預金 50,000円  
(納期遅延に対する違約金支払)

→ 取引上の追加費用として課税対象になるケースもあります。

ケース③:契約違反により違約金を受け取った場合

借方 普通預金 80,000円 / 貸方 雑収入 80,000円  
(契約違反に対する違約金受取)

→ 対価性がないため、消費税は不課税。

ケース④:セミナー中止によるキャンセル料を受け取った場合

借方 普通預金 10,000円 / 貸方 雑収入 10,000円  
(キャンセル料受取)

→ サービス提供の一部として課税対象。

違約金の経費・損金算入の可否

支払う側の場合

法人税法上、違約金は原則として損金算入可能です。
ただし、次のようなケースは注意が必要です。

  • 刑事罰・反社会的行為に関する罰金 → 損金不算入
  • 社内規定違反に伴う罰金や遅延利息 → 一部経費認定されない場合あり

通常の商取引における違約金(契約解除・遅延補償など)は問題なく損金算入できます。

受け取る側の場合

受け取った違約金は原則として益金(収益)になります。
経理上は「雑収入」として計上し、法人税や所得税の課税対象です。

税務調査で指摘されやすいポイント

① 消費税区分の誤り
違約金を「課税」として処理してしまうケース、または「不課税」としてしまうケースのいずれも誤りが多く、
税務調査で修正を求められる典型的な項目です。

特にキャンセル料や契約変更料は「役務の一部」と判断されることが多いため要注意。

② 勘定科目の統一がない
同じような違約金でも、担当者によって「雑損失」「支払手数料」「雑費」などバラバラに処理されていると、
経理の一貫性がなく、税務調査時に説明が難しくなります。

③ 契約書に違約金条項がない
支払いや受取の根拠となる契約書に「違約金条項」が明記されていないと、
税務署から「実質は別取引では?」と疑われるケースもあります。

違約金処理の実務ポイントまとめ

  • 契約違反に伴う支払:雑損失(不課税)
  • 納期遅延など軽微な違反:支払手数料(課税の可能性)
  • 受け取る違約金:雑収入(不課税)
  • サービスのキャンセル料など:雑収入(課税)
  • 刑罰や反社会的な罰金は損金不算入

違約金は「契約違反か」「役務の一部か」で課税・不課税が分かれる点が最大のポイントです。
また、契約書や請求書に「違約金の根拠」を明記しておくと、税務調査でも安心です。

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