はじめに


「そろそろ法人にしたほうが節税できるのでは?」
「個人事業だと信頼度が低いし、会社にしたい」
そう考えて法人化を決断する個人事業主は多いでしょう。
たしかに法人化には、節税・社会的信用・資金調達などのメリットがあります。
しかし、実際に法人化してみると――
「思ったより手間もコストもかかる…」
「こんなはずじゃなかった…」
と後悔するケースも少なくありません。
この記事では、法人化でよくある“3つの落とし穴”を取り上げ、それを回避するための実践的な対策をわかりやすく解説します。
落とし穴①:「節税になる」と思って法人化したが、むしろ税金が増えた

▶ よくある勘違い
「法人化すれば税金が安くなる」と思っている人は多いですが、実は売上や利益の規模によっては逆効果になることがあります。
個人事業主は「所得税+住民税」、法人は「法人税+地方法人税+均等割」など複数の税金を支払う仕組みです。
そのため、利益が少ない状態で法人化すると、固定的にかかる税金が重くのしかかるのです。
▶ 法人化によって発生する主な税金
| 税金の種類 | 内容 | 最低金額(目安) |
|---|---|---|
| 法人住民税(均等割) | 利益がなくても毎年発生 | 約7万円/年(自治体による) |
| 法人税・地方法人税 | 利益に応じて課税 | 利益の約23.2%前後 |
| 消費税 | 売上1,000万円を超えると課税 | 翌々年から課税対象 |
| 事業税 | 利益に応じて課税 | 利益が290万円超から発生 |
個人事業主のときは赤字なら税金がゼロでも、法人になると赤字でも最低7万円以上の税負担が続きます。
▶ 節税効果が出るライン
法人化が有利になるのは、おおむね年間利益が500万円〜700万円以上のケースが多いです。
それ以下では、社会保険料や顧問料を含めると、節税効果よりコスト増になることがよくあります。
▶ 回避策
- 法人化前にシミュレーションを行う
→ 税理士に依頼し、個人と法人の税負担を比較しておく。 - 役員報酬を適正に設定する
→ 法人税・所得税のバランスをとり、トータルの税金を最小化。 - 2年目以降の消費税課税を見据える
→ 売上見込みに応じて、インボイス登録時期も慎重に検討。
落とし穴②:社会保険料が想像以上に高い

▶ 法人化の瞬間に社会保険加入が義務化
個人事業主のときは、国民健康保険・国民年金に任意加入していましたが、
法人になると、強制的に社会保険(健康保険・厚生年金)へ加入しなければなりません。
しかも、加入対象は代表者1人でも避けられず、保険料は会社と本人が半額ずつ負担します。
▶ 社会保険料のイメージ(年収480万円の場合)
| 項目 | 会社負担 | 本人負担 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 健康保険・介護保険 | 約38万円 | 約38万円 | 約76万円 |
| 厚生年金 | 約47万円 | 約47万円 | 約94万円 |
| 合計負担額 | 約85万円 | 約85万円 | 年間170万円前後 |
「役員報酬を高く設定すると、その分社会保険料も増える」
つまり、節税のための報酬設定が、逆にコストを押し上げることもあるのです。
▶ 回避策
- 役員報酬を適正水準に抑える
→ 生活費を基準に、不要に高額設定しない。 - 家族を役員にしない選択肢も検討
→ 社会保険加入者を増やすほどコストが膨らむ。 - 中小企業向けの共済制度を活用
→ 「小規模企業共済」「中退共」「iDeCo+」などで積立節税を組み合わせると、保険料負担を実質軽減可能。
落とし穴③:経理・手続きが複雑になり、事務負担が急増

▶ 法人化した瞬間に「やること」が倍増
個人事業主は比較的シンプルな経理で済みますが、法人になると次のような事務が発生します。
- 複式簿記による記帳義務
- 月次試算表・決算書の作成
- 法人税・住民税・事業税の申告
- 社会保険・源泉徴収・年末調整
- 法人登記の変更・株主総会議事録の作成
これらを一人でこなすのは現実的ではありません。
会計ソフトを導入しても、税務知識がなければ処理ミスや申告漏れのリスクが高まります。
▶ よくある「法人化の後悔」パターン
- 税理士顧問料が毎月3万円以上かかる
- 経理担当を雇うほどでもなく、経営者が夜な夜な入力
- 申告や届出の期限を忘れてペナルティ
法人は「経営体」として扱われるため、期限や提出義務を守らなければ罰則(加算税・延滞税)も発生します。
▶ 回避策
- クラウド会計を活用して自動化
→ マネーフォワードクラウドやfreeeで銀行・カードを連携。 - 記帳代行・顧問税理士を早期に依頼
→ 起業初年度から専門家に任せることで、時間とリスクを削減。 - 経理ルールを最初に整備する
→ 通帳の分け方、領収書の管理方法、経費区分をルール化しておく。
それでも法人化するメリットは大きい

デメリットばかりのように見えても、正しく設計すれば法人化のメリットは十分に享受できます。
- 所得分散による節税(家族への役員報酬)
- 赤字の繰越(最長10年)
- 社会的信用度の向上(取引・融資・助成金)
- 退職金制度の導入が可能
- 法人カード・法人口座の開設が容易
要は、「どのタイミングで」「どんな形で」法人化するかが成否を分けます。
法人化を成功させるための3つのポイント

① 税負担だけでなく“キャッシュフロー”で判断する
節税額よりも、「実際に手元に残る現金」を基準に考えることが重要です。
社会保険料や税理士報酬も含めたトータルシミュレーションを行いましょう。
② 最初から経理体制を整える
法人化後は、請求・経費・給与・社会保険などが複雑に絡みます。
記帳ルールや支払い口座を明確に分けておくことで、後々のトラブルを防げます。
③ 税理士・専門家に早めに相談する
法人化は「設立手続き」よりも「税務設計」が肝心。
節税だけでなく、代表者報酬・資金計画・補助金活用までトータルで見てもらうことが理想です。
まとめ:法人化は“タイミングと設計”がすべて

- 利益が少ないうちは法人化で税負担が増えるリスクがある
- 社会保険料は想像以上に高く、毎年固定で発生する
- 事務負担も増えるため、仕組みづくりが重要
- それでも、条件が整えば大きな節税・信用アップが可能
つまり、法人化は目的ではなく、戦略の一部として考えることが大切です。
数字をもとに冷静に判断し、制度を正しく使いこなせば、後悔することはありません。
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