はじめに

「専従者として夫(または妻)の事業を手伝っているけど、パートに出てもいいの?」
「青色専従者は副業禁止って聞いたけど本当?」

――こうした疑問を持つ方は多いでしょう。
家族経営の個人事業では、配偶者や子どもを「専従者」として給与を支払うケースが一般的です。

しかし、その専従者が外で働いたり、別の収入を得たりすると、“青色専従者給与の要件を満たさなくなるリスク”が発生します。

この記事では、青色専従者・白色専従者の違いから、パート勤務や副業が認められる条件、税務署でトラブルにならないためのポイントまで、専門家目線で徹底解説します。

専従者とは?青色と白色で何が違うのか

まず「専従者」とは、個人事業主の家族で、その事業に専ら従事している人を指します。
専従者は給与を経費として計上できる一方で、「事業に専念している」ことが条件になります。

区分青色専従者白色専従者
申請書の提出必要(青色専従者給与に関する届出)不要
経費計上給与を全額経費にできる所定の専従者控除額のみ(配偶者86万円、その他50万円)
給与額労務の対価として妥当な範囲控除額に上限あり
条件「専ら事業に従事」「他の職業収入がない」同上(やや緩やか)
青色専従者と白色専従者の違い

つまり、青色専従者は「他の職業に従事してはいけない」という制約が明確にあります。
これが「パートや副業ができるか?」という論点の中心です。

青色専従者はパートに出てはいけない?

結論から言うと、青色専従者がパートや副業で働くのは原則NGです。

青色専従者給与が認められる条件として、所得税法施行令第164条に次のように定められています。

「事業主と生計を一にする配偶者その他親族で、その年を通じて6か月を超える期間、専らその事業に従事していること。」

つまり、

  • 「専ら(=他の仕事をしていない)」
  • 「6か月を超えて従事している」

この2つの要件を満たしていないと、青色専従者として認められず、給与の全額が経費否認されるリスクが生じます。

「専ら従事」とはどこまでがOKライン?

ここが最も誤解されやすいポイントです。
税務署は「専ら従事」を次のように解釈しています。

「おおむね事業主の事業に日常的・継続的に関与していること。短時間・臨時的な副業でなければならない。」

つまり、短時間のアルバイトであっても、本業よりそちらに時間を取られる場合はアウト
ただし、「月数回・数時間程度の手伝い」レベルなら問題にならないケースもあります。


たとえばこのケースはどうなる?

ケース①:週1回3時間だけのパート

→ グレーだが認められる可能性あり
「家計の足しに少しだけ働く」程度で、事業にも週4〜5日従事しているなら、税務署も実態を見て判断します。

ケース②:週5日、1日6時間のパート

→ アウト
「専ら事業に従事」とはいえません。青色専従者給与が否認されるリスクが高いです。

ケース③:繁忙期だけ短期バイト(1か月間限定)

→ 問題なし
6か月を超えない臨時的なものは「専ら従事」の要件を満たすとされます。

ケース④:ネット副業で月2万円程度の収入

→ 条件付きでセーフ
あくまで趣味や副次的なものとして事業に支障がなければ、問題になる可能性は低いでしょう。

青色専従者がパートをするとどうなる?(税務上の影響)

もし青色専従者が他の仕事をしていることが発覚すると、以下のような影響があります。

  1. 青色専従者給与が全額経費否認
     → その分、事業所得が増えて税金が増加。過去分まで遡って修正されることもあります。
  2. 扶養控除の対象外になる
     → 配偶者控除や扶養控除は使えません。
  3. 社会保険の切り替えが必要になる場合も
     → 夫の健康保険の扶養を外れ、自身で国保加入となることもあります。

白色専従者ならパートはOK?

白色申告者の専従者(専従者控除を受ける側)の場合は、青色より条件がやや緩やかです。
ただしこちらも、基本的には「事業に専念していること」が前提です。

短時間のパートであれば問題ないケースが多いですが、専従者控除を受ける以上、
「実際に事業を手伝っていること」を説明できる証拠(勤務記録など)は保管しておくべきです。

パートと専従者給与を両立したい場合の3つの選択肢

① 専従者給与を取りやめてパートに切り替える

青色専従者給与の届出を取り消し、配偶者控除の対象に戻す方法。
夫(事業主)の所得が高く、専従者給与を出すメリットが小さい場合に有効です。

② 白色専従者に変更する

青色から白色に切り替えると、経費計上の柔軟性は下がりますが、副業の自由度が高まります。

③ パート期間を半年以内に抑える

所得税法の要件では「6か月を超える期間」他の職業に従事しているとNGです。
短期・臨時バイトに限定すれば、青色専従者の資格を維持できます。

副業を考える前に見直したい「専従者制度のメリット」

青色専従者制度の最大のメリットは、家族に給与を支払っても全額を経費にできる点です。
たとえば、配偶者に年間120万円の給与を支払えば、その分だけ所得を圧縮できます。

ただし、税務署は「名ばかり専従者」を厳しくチェックしています。
実態が伴っていない場合は、経費否認だけでなく追徴課税の対象になることも。
専従者制度を最大限に活かすには、「実際に事業を手伝っている」「勤務日報や給与台帳が整っている」ことが必須です。

まとめ:専従者の副業は“期間と実態”がカギ!

  • 青色専従者は「専ら従事」が条件のため、パートや副業は原則NG
  • ただし、短期・臨時的な仕事(月数回程度)なら認められることも
  • 白色専従者なら比較的柔軟に対応可能
  • 専従者給与が否認されると税金が大幅増になるリスク
  • どうしても副業をしたいなら、「半年以内」「本業優先」で運用

つまり、副業をするなら“専従者であること”を優先しつつ、期間と勤務実態を明確に残すことが大切です。

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