はじめに

マンションやオフィスビル、店舗などを所有していると、毎月「修繕積立金」を支払うケースがあります。
特に賃貸用物件を持つ事業者や法人の場合、

「この修繕積立金は経費にできるの?」
「どの勘定科目で処理すればいい?」
と悩む人が多いでしょう。
修繕積立金は、支払った時点ではまだ修繕が行われていないため、経費処理のタイミングや勘定科目の選択を誤ると、税務調査で指摘される可能性もあります。
この記事では、修繕積立金の正しい会計処理・勘定科目・経費計上の判断基準を、個人事業主と法人のケースに分けてわかりやすく解説します。
修繕積立金とは?

修繕積立金とは、建物の共用部分の修繕や改修工事に備えて、管理組合などが住戸所有者から積み立てる資金のことです。
たとえばマンションでは、以下のような修繕を行うために使われます。
- 外壁塗装や屋上防水の改修
- 給排水設備やエレベーターの更新
- 共用廊下や駐車場の修繕
つまり、修繕積立金は将来の修繕費用のための「前払い金」という性質を持っています。
修繕積立金の勘定科目

修繕積立金の勘定科目は、支払目的とタイミングによって変わります。
| 状況 | 勘定科目 | 内容 | 経費算入可否 |
|---|---|---|---|
| 将来の修繕に備えて積立 | 資産計上(長期前払費用/預け金) | 実際に修繕されるまでの預け金扱い | ❌ 経費不可 |
| 実際に修繕が行われた | 修繕費 | 管理組合から修繕費分の請求があった | ⭕ 経費可 |
| 管理組合から返還を受けた | 雑収入 | 余剰金・解約返戻金 | ⭕ 収益計上 |
つまり、支払時点では原則「経費にならない」のがポイントです。
修繕積立金は経費にできる?

修繕積立金は、実際の修繕が行われていないため、
将来の支出に備えるための「前払金」や「預け金」とみなされます。
税法上、経費(損金)にできるのは「発生が確定している支出」のみです。
修繕積立金はあくまで「将来に備えて積み立てている段階」なので、支払時点では経費として認められません。
修繕積立金は実際の修繕に充てられた時点で、修繕費として経費にできます。
つまり、管理組合が積立金を使用して修繕を行い、その費用負担が確定した段階で「修繕費」を計上するのが正しい処理です。
例:管理組合から修繕工事費の報告が届いた場合
借方 修繕費 300,000円 / 貸方 預け金 300,000円
(修繕積立金の一部が修繕に充当された)
【法人の場合】修繕積立金の会計処理

法人がオフィス・社宅・賃貸用不動産などの区分所有建物を保有している場合、
修繕積立金の扱いは次のように分かれます。
① 支払時点の仕訳
借方 預け金(または長期前払費用) ×××円 / 貸方 普通預金 ×××円
(管理組合への修繕積立金支払)
→ 実際の修繕が行われていないため、資産として計上します。
② 修繕実施時
借方 修繕費 ×××円 / 貸方 預け金 ×××円
(修繕費に充当)
→ このタイミングで初めて損金(経費)計上が可能になります。
【個人事業主の場合】修繕積立金の会計処理

個人事業主が自宅兼事務所や賃貸マンションを所有している場合も、
考え方は法人と同じです。
- 支払時点:経費にならない(預け金扱い)
- 修繕実施時:修繕費として経費化
ただし、自宅兼事務所の場合は事業使用割合に応じて按分処理が必要です。
例:事業使用割合50%の場合
修繕費100,000円 → 経費計上50,000円(残り50,000円は家事関連費)
修繕積立金の返還・譲渡時の扱い

① 修繕積立金が返還された場合
マンションを売却する際などに、積立金の一部が返金されることがあります。
この場合は雑収入として処理します。
借方 普通預金 ×××円 / 貸方 雑収入 ×××円
(修繕積立金返還)
法人の場合は益金算入、個人事業主の場合は事業所得に含めます。
② 修繕積立金を引き継いで譲渡する場合
マンションを売却する際に「修繕積立金込み」で譲渡した場合、修繕積立金部分も譲渡価額に含まれます。
そのため、譲渡所得の計算上は含めて処理する必要があります。
(税務上は不動産譲渡所得の一部とされます)
実務上の注意点

注意①:修繕積立金と管理費は別物
「管理費」は共用部の維持管理(清掃・エレベーター保守など)に充てられるため、
支払時点で経費計上OK(消耗的支出)です。
一方、修繕積立金は将来の修繕に備えた預り金的性質なので経費不可。
この2つを混同しないようにしましょう。
注意②:管理組合の決算書を保管
修繕積立金の使途や充当金額を確認するため、
管理組合からの「収支報告書」や「修繕計画書」は必ず保管しておきましょう。
税務調査で「修繕が実際に行われた時期」を問われることがあります。
注意③:中古物件購入時の注意
中古マンションを購入した場合、前所有者が積み立てた修繕積立金は引き継げますが、経費にはなりません。
これは、既に建物の取得価額に含まれているとみなされるためです。
まとめ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 勘定科目 | 支払時:預け金/長期前払費用 修繕時:修繕費 |
| 経費計上 | 修繕実施時に可能(支払時は不可) |
| 消費税 | 不課税取引 |
| 管理費との違い | 管理費は経費、修繕積立金は資産計上 |
| 返還時 | 雑収入として処理 |
修繕積立金は、支払時点では経費にならず、修繕実施時に経費化できるという点が最大のポイントです。
支払時に経費処理してしまうと税務上の否認リスクがあるため、慎重な処理が求められます。
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