はじめに


「会社を作ったけれど、しばらく活動していない」
「実質的に動かしていない会社の決算ってどうすればいいの?」
こうした「休眠会社」に関する相談は年々増えています。
副業ブームや起業ブームで設立だけして、その後休業している法人が多く、
「何もしなくてもいいのでは?」と誤解して放置してしまうケースもあります。
しかし、休眠中でも「決算」と「税務申告」は義務」です。
これを怠ると、思わぬペナルティや復活時のトラブルに発展することもあります。
この記事では、休眠会社における決算・税金・届け出手続き・注意点までをわかりやすく解説します。
そもそも「休眠会社」とは?

「休眠会社」とは、登記上は存続しているが、実際の営業活動を行っていない会社のことです。
つまり、法人登記簿に「存続中」と記載されている限り、法律的には“生きている”会社という扱いになります。
代表的な休眠状態のパターンは次の通りです。
- 売上・経費の発生がない
- 銀行口座・取引先・従業員なし
- 実質的に経営活動を停止している
- 将来の再開やM&Aを見据えて残している
休眠状態であっても、法人格を維持している限り、毎年の決算・申告・届出義務は消えません。
休眠中でも決算と申告は必要?

結論:必要です。
法人は活動していなくても、次の2つの提出義務があります。
① 決算書の作成
営業活動がない場合でも、「損益計算書」「貸借対照表」などの決算書を作成する必要があります。
売上ゼロ・経費ゼロなら「すべて0円」と記載した決算書を作ります。
② 税務申告
法人税・住民税・事業税などの申告書を、毎期提出する義務があります。
これはたとえ赤字・売上ゼロであっても必要です。
休眠中でも発生する税金はあるの?

営業していないのに税金がかかるの?
――答えは「はい、一部はかかります」。
1. 法人住民税の均等割(毎年かかる)
地方税の「均等割」は、利益の有無に関係なく課税されます。
金額は自治体によって異なりますが、最低でも年間約7万円前後が目安です。
| 所在地 | 均等割額(目安) |
|---|---|
| 東京都23区 | 7万円 |
| 大阪市・名古屋市など | 5~7万円 |
| 地方自治体 | 約5万円前後 |
つまり、休眠状態でも「法人格を残している限り、均等割だけは必ず発生」します。
2. 法人税・事業税
利益がゼロ(=所得なし)であれば、法人税・事業税は課税されません。
ただし、申告書の提出義務はあるため、「納税ゼロでも申告は必須」です。
休眠会社の決算手続きの流れ

営業していない会社でも、通常の会社と同じように「決算期ごと」に処理を行います。
ただし、取引がないため内容は非常にシンプルです。
ステップ1:帳簿・通帳の確認
- 売上・仕入・経費が本当に発生していないかを確認
- 法人口座やクレジットカードに少額の動きがないか確認
(振込手数料・口座維持費なども経費になります)
ステップ2:決算書の作成
- 損益計算書:売上・費用がなければ「すべて0円」
- 貸借対照表:資本金・預金残高・未払税金などを記載
※休眠開始前の期から繰り越して作成します。
ステップ3:税務申告書の作成・提出
- 法人税申告書(国税庁)
- 法人事業税・法人住民税申告書(都道府県・市区町村)
を所轄税務署・自治体に提出します。
休眠状態にするための正式な届出

「今後しばらく会社を動かさない」場合は、単に放置せず、正式に休眠届を提出しましょう。
| 提出先 | 提出書類 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人事業等休止届出書 | 休業後すぐ |
| 都道府県税事務所 | 事業休止届出書 | 同上 |
| 市区町村 | 事業休止届出書 | 同上 |
これらを提出すると、自治体によっては「均等割の課税停止」が認められるケースもあります。
ただし、東京都など一部地域では休眠でも均等割は課税されるため、事前確認が必要です。
休眠会社を「そのまま放置」したらどうなる?

① 青色申告が取り消される
3年間無申告が続くと、青色申告の承認が取り消しになります。
将来再開したときに、節税メリット(欠損金繰越など)が失われます。
② みなし解散(登記抹消)のリスク
会社法では、12年以上登記がない株式会社は「みなし解散」扱いとなります。
法務局が職権で「解散登記」を行うことがあり、復活するには「継続の登記」と登録免許税の支払い(3万円)が必要です。
③ 税務署・自治体からの督促
申告がないと「申告書提出のお願い」「税務調査予告」が届くこともあります。
長期間放置はトラブルの元になるため注意が必要です。
休眠会社を再開(復活)するには?

将来的に事業を再開する場合は、以下の手続きを行えば復活可能です。
- 税務署・自治体に「事業開始届出書」を提出
- 必要に応じて銀行口座・社会保険を再開
- 通常通りの決算・申告を再スタート
青色申告の承認を受けていた場合は、再開時に再承認を申請することで、再び青色申告が可能です。
休眠会社を解散・清算する場合の手続き

「もう再開予定がない」「維持コストを減らしたい」場合は、解散と清算を検討しましょう。
解散・清算の流れ
- 株主総会で解散決議
- 法務局へ「解散登記」
- 清算人を選任し、税務署・自治体へ届出
- 残余財産の分配・債務整理
- 最後の決算・確定申告(清算確定申告)
- 清算結了登記
このプロセスを終えると、会社は完全に消滅し、毎年の申告・税金負担もゼロになります。
休眠会社を維持すべきか?それとも解散か?

判断のポイントは次の3つです。
| 状況 | おすすめ対応 | 理由 |
|---|---|---|
| 将来再開予定あり | 休眠届を提出し維持 | 登記・社名・口座を残せる |
| 再開予定なし | 解散・清算 | 毎年の税金負担をストップ |
| 迷っている | 1~2年だけ休眠 | 均等割のみ支払って様子見 |
登記維持にかかる最低コスト(均等割+税理士手数料など)を考えると、
年10万円前後が目安になります。
将来的な再利用価値があるかどうかを基準に判断しましょう。
休眠会社の会計処理のポイント

- 預金残高や資本金は貸借対照表にそのまま記載
- 経費が発生していない場合は「経費ゼロ」として処理
- 口座維持費・税理士費用・登記費用などは経費計上可能
- 役員報酬をゼロにして社会保険料負担を軽減
また、休眠中の会計処理は毎期同じフォーマットで行うことが重要です。
期ごとに異なる処理をすると、再開時や清算時に整合性が取れなくなります。
まとめ:休眠中でも「決算と申告」は義務。放置は厳禁!

- 休眠会社でも、決算書と税務申告は毎年必要
- 売上ゼロでも法人住民税の均等割は課税される
- 休眠届を出すと、自治体によっては軽減措置あり
- 長期間放置すると、青色申告取消・みなし解散リスク
- 再開・解散は届け出だけで簡単に手続きできる
「とりあえず放置」は最もリスクが高い選択肢です。
少額でも毎年しっかり決算処理をしておくことで、会社の信用と法的ステータスを守ることができます。
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