はじめに

取引先や顧客からの入金を確認した際に、「請求額より多く振り込まれている…」
というケースは意外と多いものです。
こうした“もらいすぎたお金”は、そのまま売上として処理してしまうと誤りになります。
では、どの勘定科目で処理し、どのタイミングで修正すべきなのでしょうか?
この記事では、過入金(もらいすぎたお金)を受け取った場合の正しい会計処理と、個人事業主・法人別の注意点、返金時の仕訳、消費税の扱いまでを徹底解説します。
「もらいすぎたお金」はどんなときに発生する?

過入金(かにゅうきん)は、取引先からの入金が請求額を上回った場合に発生します。
主な原因は次のようなものです。
- 振込金額の入力ミス(桁違い・計算誤り)
- 同一請求書を二重で支払った
- 請求書に誤りがあり、修正前に支払いが行われた
- 送料や手数料を含めずに請求していた
- 先方の都合で多めに支払われた(預け金扱い)
このような場合、受け取った時点では「返金する義務があるお金」であり、会計上は「一時的な負債」として処理します。
もらいすぎたお金の勘定科目

もらいすぎたお金(過入金)は、原則として「預り金」または「未払金」で処理します。
| 状況 | 使用する勘定科目 | 内容 |
|---|---|---|
| 原則 | 預り金 | 一時的に預かっている他人の資金 |
| 取引先が確定している場合 | 未払金 | 後日返金予定の金額 |
| 相手先が不明・少額 | 雑収入(最終処理) | 返金不能になった場合など |
【ケース別】もらいすぎたお金の仕訳方法

ケース①:過入金が発生したとき
取引先から10万円の請求に対して、誤って11万円が入金されたケース
借方 普通預金 110,000円 / 貸方 売掛金 100,000円
貸方 預り金 10,000円
(取引先からの過入金を受け取った)
→ 過剰入金分は「預り金」として一時的に負債処理します。
ケース②:後日、過入金を返金したとき
借方 預り金 10,000円 / 貸方 普通預金 10,000円
(過入金を返金)
→ 一時的に預かっていた金額を返金したため、負債を消します。
ケース③:返金せず次回請求分に充当した場合
借方 預り金 10,000円 / 貸方 売掛金 10,000円
(次回請求分に充当)
→ 実際の返金は行わず、翌月以降の請求から差し引く場合の処理です。
ケース④:相手が不明・連絡が取れない場合
返金先がわからず、数年経過して返金不能になった場合は、**「雑収入」**として処理します。
借方 預り金 10,000円 / 貸方 雑収入 10,000円
(返金不能により雑収入へ振替)
税務上は、返金義務が消滅したと認められる時点(通常は時効の成立後)で収益計上します。
個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人では、最終的に「雑収入」として処理する際の扱いが異なります。
| 区分 | 勘定科目 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 法人 | 雑収入 | 益金(法人税課税対象) |
| 個人事業主 | 雑収入 | 事業所得に含まれる |
つまり、返金不能となった過入金を雑収入に振り替える場合は、どちらも課税対象となる収益になります。
返金が複数件発生した場合の管理方法

過入金が複数の顧客で発生している場合は、「預り金(取引先別補助)」で管理するのが最も実務的です。
会計ソフトの補助科目機能を使って、
- 預り金/A社
- 預り金/B社
といった形で管理すると、返金漏れを防げます。
実務担当者が注意すべきポイント

① 入金確認時は「請求書」と必ず照合する
請求額と一致しない入金は、すぐに原因を調べましょう。
誤入金の場合、早めに連絡すれば信頼関係の維持にもつながります。
② 返金の証拠を残す
返金した場合は、振込明細書・メール・領収書などの記録を残しておくこと。
税務調査で「本当に返金したのか?」を確認されるケースがあります。
③ 長期間放置しない
過入金を預り金のまま放置すると、負債残高が膨らむだけでなく、
「返金漏れ」「収益計上漏れ」として指摘されるリスクもあります。
定期的に残高確認を行い、不要なものは整理しましょう。
まとめ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 勘定科目 | 原則「預り金」、場合により「未払金」や「雑収入」 |
| 消費税 | 不課税取引(返金時も不課税) |
| 返金時の処理 | 預り金を消す仕訳(借方:預り金) |
| 売上誤請求時 | 「売上値引」または「預り金」で修正 |
| 税務上の扱い | 返金不能時は「雑収入」として課税対象 |
もらいすぎたお金は、一時的な預り金として処理し、返金または相殺で消し込むのが基本です。
放置せず、定期的に確認・整理しておくことが正確な経理につながります。
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