はじめに

税理士や行政書士、宅地建物取引士、建設業関連など、資格を持って仕事をする場合には「資格更新料」が発生します。
このとき、「更新料は経費にできるの?」「どの勘定科目を使えばいいの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

実は、資格更新料の性質によって勘定科目や経費処理の方法が異なり、税務上の判断を誤ると、経費として認められないリスクもあります。

この記事では、資格更新料の正しい勘定科目の選び方から、具体的な会計処理・税務上の注意点まで、わかりやすく解説します。

資格更新料とは?

資格更新料とは、既に取得した資格の有効期間を延長するために支払う費用のことです。
新たに資格を取得する「登録料」「受験料」とは異なり、更新料は資格を維持するための費用という位置づけになります。

資格更新料が必要となる主な資格

  • 宅地建物取引士(宅建士)
  • 行政書士
  • 税理士・社会保険労務士・弁護士
  • 建築士
  • 医師・看護師・薬剤師などの医療系国家資格
  • 各種民間資格(FP・簿記・IT関連など)

それぞれの資格で「登録更新」「講習受講」「会費支払」などの名目が異なりますが、会計上はどれも「資格維持のための支出」として判断します。

勘定科目の選び方:目的別に判断

資格更新料の勘定科目は、支払の目的と性質によって次のように区分します。

支払の内容勘定科目会計上の区分消費税区分
資格維持・更新のための費用租税公課 or 研修費 or 支払手数料販売費及び一般管理費課税(10%)
業務上必要な登録更新料支払手数料 or 雑費販管費課税
所属団体(協会・会)への会費会費販管費不課税または課税(団体性質による)
個人的な資格更新(業務に関係なし)経費計上不可

つまり、資格更新料は基本的に業務に関連していれば経費計上が可能ですが、プライベート目的の場合は経費にできません

勘定科目の具体例

① 資格更新料を「租税公課」で処理する場合

国家資格など、法令に基づく登録更新の場合は「租税公課」で処理するケースが多いです。

借方 租税公課 10,000円 / 貸方 現金 10,000円  
(宅建士登録更新手数料として)

税理士・行政書士・宅建士など、法律に基づいて資格維持を行う職業ではこの処理が一般的です。

② 民間資格の更新料を「支払手数料」や「研修費」で処理する場合

民間団体が発行する資格(FP、簿記、IT資格など)の更新料は、事業に関連している場合「支払手数料」または「研修費」で処理します。

借方 支払手数料 8,000円 / 貸方 普通預金 8,000円  
(FP資格更新料として)

もし更新時に研修講座を受講する場合は、「研修費」で処理しても問題ありません。

③ 協会や団体への年会費を「会費」で処理する場合

税理士会や建築士会など、資格者が所属する団体への年会費・登録料は「会費」で処理します。

借方 会費 20,000円 / 貸方 普通預金 20,000円  
(建築士会の年会費支払)

なお、団体によっては「消費税が課されない(不課税)」場合もあります。請求書の明細を必ず確認しましょう。

消費税の取扱い

資格更新料は原則として課税取引に該当します。
ただし、次のようなケースでは不課税になるため注意が必要です。

状況消費税区分理由
国家資格の更新料不課税行政機関への支払いは非課税
民間資格の更新料課税事業者による役務提供に該当
協会・組合の会費不課税 or 課税団体の性質(非営利・営利)による

たとえば「宅地建物取引士証の更新料」は都道府県に支払うため不課税ですが、
「更新時の講習受講料」は民間業者が提供するサービスなので課税となります。

税務上のポイント:経費として認められる条件

条件1:業務に関連していること
資格更新料が経費として認められるためには、その資格が実際の業務に必要であることが前提です。

例えば、税理士事務所に勤務する税理士が登録更新料を支払う場合は経費になりますが、
まったく業務に関係ない資格(例:趣味の英検、ヨガインストラクター資格など)は経費にできません。

条件2:法人・個人のどちらが負担しているか明確にする

会社が負担する場合は法人経費、個人が自己負担する場合は個人の経費です。
法人が社員の資格維持のために負担する場合、福利厚生費として処理するケースもあります。

条件3:支払い証憑を必ず保管
更新料の支払いがあった場合、請求書・領収書・講習受講証明書などを必ず保管しましょう。
税務調査では「事業関連性を示す書類」が求められることがあります。

実務のポイントまとめ

ポイント内容
勘定科目租税公課・支払手数料・研修費・会費など目的別に選定
消費税区分国家資格は不課税、民間資格は課税が原則
経費算入業務に関連していれば損金算入可能
注意点講習料と登録料は区分処理/証憑保管を徹底

資格更新料は「業務に直結する支出」であることを証明できれば、税務上も問題なく経費として認められます。
一方、私的な資格更新や趣味目的の資格は経費対象外となるため注意が必要です。

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