美術品の会計処理は「減価償却できるかどうか」が分かれ目

事業で美術品を購入した場合、すべてが経費になると思っていませんか?
実は美術品は原則として減価償却の対象外とされています。
なぜなら、美術品は年月を経てもその価値が減らない(または上がる)ことが多く、他の機械や設備とは性質が異なるためです。
しかし例外も存在します。
この記事では「美術品が減価償却できるケース」と「勘定科目の選定」「耐用年数の考え方」について、会計や税務の実務に基づいてわかりやすく解説します。
法人・個人事業主ともに、100万円を超えるかどうかが非常に重要なポイントとなります。
100万円未満なら「減価償却資産」として処理できる?

国税庁の通達(法人税基本通達7-1-1)では、美術品が減価償却できるかの判断基準として、以下の2つの条件を示しています。
1.取得価額が1点あたり100万円未満であること
2.業務の用に供していること(=仕事に使っている/仕事場に展示している等)
この条件を満たす場合、美術品であっても減価償却資産として経費化が可能です。
つまり、美術品を仕事場に飾ったり、待合室や店舗の雰囲気づくりのために設置したりしている場合には、勘定科目として「工具器具備品」や「建物附属設備」として処理し、数年にわたって減価償却できます。
100万円以上の場合は「非減価償却資産」として固定資産に

一方、取得価額が100万円以上の美術品は、その美術的価値が年月とともに失われるとは限らないという理由から、減価償却ができない資産(非償却資産)とみなされます。
このような場合は「美術品」や「資産」として固定資産に計上しますが、減価償却費として経費にはできません。
つまり、長期にわたって帳簿上の価値は変わらず、そのまま資産として残り続けます。
特に、画家の作品や一点物の工芸品、有名作家による彫刻などは、将来的に価値が上がる可能性もあるため、税務上は非常に慎重に取り扱われます。
美術品の勘定科目はどうする?会計処理の実務例

美術品の勘定科目は、その取得価額と用途によって大きく異なります。以下は主なパターンです。
(1)100万円未満かつ業務使用の場合
→「工具器具備品」または「建物附属設備」
この場合は減価償却が可能です。例えば、オフィスの応接室に飾るための壁掛け絵画(80万円)など。
(2)100万円以上または業務使用でない場合
→「美術品」や「資産」などの固定資産勘定科目
減価償却は不可となり、帳簿上の価値も変動しません。
また、取得に関わる運搬費や設置費、額縁代などは基本的に取得原価に含める必要があります。
これらも含めた金額が100万円以上か未満かで判断される点にも注意が必要です。
美術品の耐用年数は?実は明確な規定はない

美術品に対して、税法上で明確な耐用年数は定められていません。
これは先述の通り、美術品は原則として価値が減らない資産だからです。
ただし、100万円未満の美術品で業務用として減価償却を行う場合は、会社ごとに合理的な耐用年数を設定する必要があります。
一般的には、以下のような目安で設定されるケースが多く見られます。
・工具器具備品と同様に、5年や8年
・建物附属設備に準じて、10年
・劣化しやすいポスターや装飾品であれば、3年
実務では、設備と一体として使われているか、耐久性や美術的な価値がどの程度あるかなど、状況に応じて会計士や税理士の判断を仰ぐことが適切です。
美術品の売却・廃棄時はどう処理する?

美術品を売却または処分した場合、帳簿上の処理が必要になります。
減価償却していた場合
売却時には「売却益」または「売却損」、廃棄時には「除却損」として計上。
減価償却していない場合(100万円以上など)
帳簿上の価値はそのままなので、売却価格との差額で損益を算出し計上。
特に100万円以上の美術品は、減価償却されていないため、帳簿残高と実際の売却金額の差が大きくなるケースがあります。
このような場合には、証拠書類や価格算定根拠をしっかり残しておくことが税務調査時の防衛になります。
税務リスクにも注意!業務用と私的利用の区別が重要

税務署は、美術品の購入に関して非常に厳しい目を持っています。
なぜなら、本当は業務用ではなく、役員の趣味や個人的なコレクションとして使われている可能性があるからです。
以下のようなポイントを明確にしておくことで、リスクを回避できます。
・会社のどこに設置しているか(オフィス内、応接室、店舗など)
・社員や顧客の目に触れる場所にあるか
・美術品の購入目的や業務との関係性を記録
・証憑類(領収書、設置写真、設置契約書など)を保存
経費否認されないためには、「明らかに業務の用に供している」ことを客観的に証明できるようにしておくことが必須です。
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