はじめに

銀行借入や社内ローンなどを利用していると、利息の支払いが翌月や翌期にずれ込むことがあります。
このように「支払期日が到来していないが、すでに発生している利息」を未払利息と呼びます。
たとえば、決算月の利息を翌月に支払う場合や借入金の支払日が毎月末以外に設定されている場合
などは、決算時点で「未払利息」を計上しなければなりません。
この記事では、未払利息の正しい勘定科目・仕訳方法・税務上の注意点を、個人事業主・法人の両方の視点から解説します。
未払利息とは?

未払利息とは、支払期日がまだ来ていないが、発生している利息費用を指します。
会計上は「発生主義」が原則のため、支払っていなくても発生した時点で費用計上しなければなりません。
例:
3月決算の会社が、4月に3月分の利息を支払う場合
→ 3月末時点で「未払利息」を計上する必要があります。
未払利息の勘定科目

未払利息は、負債科目の「未払費用」または「未払利息」で処理します。
| 勘定科目 | 種類 | 内容 |
|---|---|---|
| 未払利息 | 負債(流動負債) | 利息費用が発生済みだが未払いのもの |
| 未払費用 | 負債(流動負債) | 支払前の費用全般(利息含む) |
勘定科目を細かく区分したい場合は「未払利息」、まとめたい場合は「未払費用」として処理しても構いません。
未払利息の仕訳方法

① 利息の発生を認識したとき(決算時など)
銀行借入金の利息が発生しているが、支払いが翌月の場合:
借方 支払利息 10,000円 / 貸方 未払利息 10,000円
(3月分の利息を計上)
→ 支払は翌月になるため、負債(未払利息)として計上します。
② 翌月に利息を支払ったとき
借方 未払利息 10,000円 / 貸方 普通預金 10,000円
(未払分の利息を支払)
→ 決算時に計上した未払利息を取り消し、実際の支払いを反映します。
③ 決算時に利息を見積計上する場合
決算日までの利息が明確でない場合、期間按分(計算)して見積もります。
例:借入残高1,000万円、年利3%、決算期3月末、支払日が4月30日
→ 1ヶ月分の利息:1,000万円 × 3% ÷ 12 = 25,000円
借方 支払利息 25,000円 / 貸方 未払利息 25,000円
→ 翌月の支払い時に実際の金額との差額を調整します。
個人事業主の場合の処理

個人事業主の場合も、原則は法人と同様です。
ただし、青色申告をしている場合のみ「発生主義」を採用します。
- 青色申告:発生主義 → 未払利息を計上
- 白色申告:現金主義 → 支払時点で計上
したがって、白色申告の個人事業主は、未払利息の計上は不要です。
税務上の注意点

① 発生主義の原則
法人会計では、「発生主義」が原則です。
利息は支払の有無に関係なく、発生した会計期間に属する費用として処理しなければなりません。
② 銀行借入金以外の利息(例:役員借入・親族間貸付)
銀行以外からの借入(例:役員・親族)でも、契約上利息が発生している場合は同様に未払計上します。ただし、契約書がない・利率が不明確な場合は、税務上「実質的に無利息」とみなされることがあるため注意が必要です。
③ 消費税の扱い
利息は「金融取引」に該当するため、消費税の課税対象外(不課税取引)です。
したがって、支払利息・未払利息ともに消費税を含めず処理します。
④ 遅延利息・延滞金との違い
遅延利息(支払遅れによる利息)は性質が異なります。
契約上の借入利息は「支払利息」、延滞による違約金的な利息は「雑損失」や「支払手数料」として処理するのが一般的です。
実務での注意点

注意①:銀行明細だけで判断しない
銀行口座への利息支払日は月によってズレることがあります。
決算時は必ず借入契約書や返済予定表を確認し、未払い分を漏れなく計上しましょう。
注意②:支払利息と借入金残高の対応を取る
借入金の金利・返済期間と利息計上額が整合していないと、税務調査で「計上漏れ」「期間ズレ」として指摘されることがあります。
毎期、利息発生額を再確認しておきましょう。
注意③:未払利息の勘定残高を翌期で必ず消す
決算で計上した未払利息は、翌期の支払い時に必ず取り消す必要があります。
これを忘れると、未払残高が累積し、決算書の整合性が崩れてしまいます。
まとめ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 勘定科目 | 未払利息または未払費用(負債科目) |
| 対応する費用科目 | 支払利息 |
| 消費税 | 不課税取引 |
| 計上時期 | 利息発生時(決算など) |
| 個人事業主 | 青色申告は計上、白色申告は不要 |
| 注意点 | 翌期で必ず消し込み・契約書を確認 |
未払利息は、支払前であっても「発生している費用」を正確に認識するための会計処理です。
発生主義の原則に基づき、決算時には漏れなく計上することで、正確な損益計算書を作成できます。
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