はじめに

企業や個人事業主にとって、国や自治体から受け取る「助成金・補助金」は事業運営を支える重要な資金源です。
しかし、いざ入金があったときに、

「どの勘定科目を使えばいいの?」
「税金はかかるの?」「いつ計上すればいいの?」
と迷う方も多いのではないでしょうか。
助成金は種類によって扱いが異なり、処理を誤ると税務調査で指摘されるリスクもあります。
この記事では、助成金の正しい会計処理・勘定科目・仕訳方法を具体的に解説し、さらによくある3つの注意点についてもわかりやすく紹介します。
助成金とは?

助成金とは、国・自治体・民間団体などから支給される返済不要の資金のことです。
雇用維持や設備投資、業務改善など、特定の目的に使うことを条件に支給されます。
主な助成金・補助金の例は次の通りです。
| 種類 | 支給主体 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 雇用調整助成金 | 厚生労働省 | 雇用維持・休業補償 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 中小企業庁 | 販路開拓・広告費 |
| IT導入補助金 | 経済産業省 | 業務効率化・システム導入 |
| ものづくり補助金 | 経産省 | 設備投資・技術開発支援 |
| 自治体の補助金 | 都道府県・市町村 | 開業支援・創業補助 など |
助成金は「もらえる時点」ではなく、「もらう根拠(交付決定)」や「入金時点」で処理方法が変わります。
助成金の勘定科目

助成金を受け取ったときは、基本的に「雑収入」または「補助金収入」で処理します。
ただし、使い道が固定資産(設備・機械など)か、経費(広告費・人件費など)かによって扱いが異なります。
| 助成金の使途 | 勘定科目 | 会計処理の考え方 |
|---|---|---|
| 経費補填(広告費・人件費など) | 雑収入/助成金収入 | 通常の収益として計上 |
| 設備投資補填(機械・備品など) | 圧縮記帳(固定資産圧縮) | 固定資産の取得原価を圧縮 |
| 開業・創業補助など | 雑収入/創業助成金 | 目的に応じて雑収入として処理 |
助成金の仕訳方法

ケース①:経費補填タイプ(雇用・運営補助など)
雇用調整助成金や事業再構築補助金など、運営経費を補填するタイプは「雑収入」で処理します。
借方 普通預金 1,000,000円 / 貸方 雑収入 1,000,000円
(雇用調整助成金を受領)
→ 入金時点で収益計上。損益計算書上は「営業外収益」として表示します。
ケース②:固定資産取得に関連する助成金(設備・システム導入)
IT導入補助金など、設備・システム購入に使った場合は圧縮記帳が必要です。
助成金で支払った部分を資産の取得原価から控除します。
例:100万円のシステム導入に対し、補助金50万円を受け取った
借方 ソフトウェア 1,000,000円 / 貸方 普通預金 1,000,000円 (購入時)
借方 雑収入 500,000円 / 貸方 圧縮積立金 500,000円 (補助金受領)
借方 圧縮積立金 500,000円 / 貸方 ソフトウェア 500,000円 (圧縮記帳)
→ 補助金部分を差し引いて、減価償却費を抑えることができます。
ケース③:交付決定が出たが入金前の場合
交付決定(採択)が出ても、入金前はまだ確定していないため、原則として仕訳不要です。
ただし、決算日までに入金見込みが確実な場合は「未収入金」で処理します。
借方 未収入金 500,000円 / 貸方 雑収入 500,000円
(交付決定済み・入金未了)
→ 翌期に入金があったら「未収入金」を消し込みます。
助成金にかかる税金

① 法人税・所得税
助成金は、原則として課税対象(益金扱い)です。
つまり、事業の利益として計上し、法人税や所得税の計算に含まれます。
例外:
- 災害見舞金など、損害補填的な性質が強いものは非課税の場合もあり。
- 交付要領や通達で明記されている場合は確認が必要です。
② 消費税
助成金は、消費税の課税対象外(不課税)です。
なぜなら、助成金は「商品・サービスの対価」ではなく、「行政支援金」であるためです。
| 区分 | 消費税の扱い |
|---|---|
| 助成金・補助金 | 不課税 |
| 対価性のある報酬(委託費・請負) | 課税対象 |
【実務で注意すべき3つのポイント】

① 経費補填か、資産補填かで処理が変わる
助成金の会計処理で最も重要なのは、「何の費用に使ったのか」という点です。
- 経費(広告費・人件費・家賃など) → 雑収入でOK
- 資産(設備・機械・システムなど) → 圧縮記帳処理が必要
この区分を誤ると、減価償却費や税金の計算がズレるため注意が必要です。
② 収益計上のタイミングは「交付決定」か「入金」か
原則として、助成金の収益計上は「入金時点」ですが、
交付決定通知があり、入金が確実な場合はその時点で収益認識します。
例:
12月決算で、12月20日に交付決定、翌年1月10日に入金 → 12月期で計上可。
③ 同じ費用を二重計上しない
助成金で補填された費用を、経費と助成金の両方で計上してしまう「二重計上ミス」がよくあります。
例:
- 給与100万円を経費計上
- 雇用調整助成金100万円を雑収入計上(OK)
→ ここまでは良いが、助成金分を控除せず経費に入れると、実際より利益が小さく見えてしまいます。
経費と助成金の関係がわかるよう、補助対象経費の明細を必ず残しましょう。
【補足】助成金の返還が発生した場合

助成金が不正受給や要件未達で返還となった場合は、返還時に「雑損失」または「租税公課」で処理します。
借方 雑損失 ×××円 / 貸方 普通預金 ×××円
(助成金返還)
→ 税務上は損金算入(経費)として認められます。
まとめ

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 勘定科目 | 経費補填:雑収入/設備補填:圧縮記帳 |
| 消費税 | 不課税取引 |
| 税務上の扱い | 原則課税所得に含まれる |
| 計上タイミング | 入金時(または交付決定時) |
| 注意点 | 二重計上・圧縮記帳・返還処理に注意 |
助成金は、資金的には「もらって嬉しいお金」ですが、会計処理を誤ると税金面で不利になることもあります。
特に設備投資系の補助金では、圧縮記帳処理を正しく行うことが大切です。
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